ぎをん齋藤
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廓(くるわ)とぎをん齋藤

ぎをん齋藤のことをよく知らない人から「おたくは祇園の芸妓、舞妓のきものを専門に作っている店ですか?」と尋ねられることがある。

確かに先代の頃は廓のお客様が多かったと記憶している。初代の上京区から祇園に移転してきたのもその筋の顧客を獲得する為だったかもしれない。

現在店のある新門前通は京舞「井上八千代」氏のお膝元、先代家元のころから舞の衣裳などのご下命を頂いていたのも事実、そのご縁で祇園甲部のお客様が増えたのであろうと推測する。

私が7代目を継いだ頃は廓好みのきものを積極的に作り出し地域に密着した経営を目指した。しかし古裂を研究していくうちに、自分が本当に作りたいのは江戸後期の美ではなく、桃山時代の小袖や同時代にインドに注文して作らせた更紗など16世紀の美に惹かれるようになった。

その頃からぎをん齋藤のテイストは変わっていったと自認する。消費者のニーズに合わせて物を作るのは商売上常識かもしれないが、人間、歳を重ねると「ワガママ」が優先しまうのか自分の本質が露呈するのか、気の向くものしか作れなくなる。

徐々に廓とは離れつつあるのも致し方ないと思っている。

私の帯作り集大成

この数年力を入れてきた摺箔シリーズ帯の新作にチャレンジし帯作りの集大成にしたい。

そもそも摺箔シリーズは私が敬愛する故「徳田義三」の発想によりできたものだと思っている。箔を織り込む、いわゆる金襴織りは中国、唐時代から始まる1400年の歴史がある技法である。

紙に金箔や銀箔を膠で貼り付け短冊状に細く切ったもの横糸として織り込ませて紋様を織り出す織物は「金襴、緞子」と歌にも登場する高級織物の代表格である。用途は僧侶の袈裟がほとんどだが衣類にも使用され、現在でも袈裟や仏具として金襴を織る工芸は西陣織の主力に変わりはない。

徳田義三は金襴を複数の箔を織り込み更に織りあがったものに加色するという前衛的な手法を編み出した20世紀最大の帯クリエーターである。

現在ぎをん齋藤で展開中の摺箔帯は徳田義三の薫陶を受けたK氏の作品を復刻したもので、それらから徳田の手法を学び新たな作品の参考としたいと考えている。さてどんなものが出来上がるか「乞うご期待」。

虫の音

虫の音が大きくなると秋の展示会が近いと感じさせられる。

今年の会は9月29日から10月5日までの1週間を予定しているのでこの時期は物作りと店の修繕で気忙しい。

展示会は東京でもそうだが以前と比べると確実に来場者が多くなった。京都での会は数年前から3日間であったのを1週間に拡大したのも、お客様が重なって狭い会場に人と商品が入り乱れることを避けるためである。

京都で年に二度、全商品を飾るのだから一人でも多くの人に見てもらいたいという願いと、普段「敷居が高い」と言われる店構えを気にせずに気軽に京町家をお見せするいい機会なればと考えている。

店舗は築120年程の典型的京町家で、最近さすがにあっちこっちの傷みが目につくようになった。毎年展示会を機会に修繕するのが町家保善の意味でも意義があり、特に町内は歴史的保存地区に指定されているので、修繕するのも京都市に届出する仕組みになっている。

店は現在仕事場としてのみ使用しているが、昭和初期には住み込みの従業員が3名と家族4名が生活していたと父から聞かされたときは驚いたことを思い出す。

さて今年の展示会テーマ商品は私が力を入れている「摺箔帯」と「ぼかし染め」である。どちらも腕利きの職人達の技を「ぎをん齋藤」のテイストでご覧に入れる。