ぎをん齋藤
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私の帯作り集大成

この数年力を入れてきた摺箔シリーズ帯の新作にチャレンジし帯作りの集大成にしたい。

そもそも摺箔シリーズは私が敬愛する故「徳田義三」の発想によりできたものだと思っている。箔を織り込む、いわゆる金襴織りは中国、唐時代から始まる1400年の歴史がある技法である。

紙に金箔や銀箔を膠で貼り付け短冊状に細く切ったもの横糸として織り込ませて紋様を織り出す織物は「金襴、緞子」と歌にも登場する高級織物の代表格である。用途は僧侶の袈裟がほとんどだが衣類にも使用され、現在でも袈裟や仏具として金襴を織る工芸は西陣織の主力に変わりはない。

徳田義三は金襴を複数の箔を織り込み更に織りあがったものに加色するという前衛的な手法を編み出した20世紀最大の帯クリエーターである。

現在ぎをん齋藤で展開中の摺箔帯は徳田義三の薫陶を受けたK氏の作品を復刻したもので、それらから徳田の手法を学び新たな作品の参考としたいと考えている。さてどんなものが出来上がるか「乞うご期待」。

虫の音

虫の音が大きくなると秋の展示会が近いと感じさせられる。

今年の会は9月29日から10月5日までの1週間を予定しているのでこの時期は物作りと店の修繕で気忙しい。

展示会は東京でもそうだが以前と比べると確実に来場者が多くなった。京都での会は数年前から3日間であったのを1週間に拡大したのも、お客様が重なって狭い会場に人と商品が入り乱れることを避けるためである。

京都で年に二度、全商品を飾るのだから一人でも多くの人に見てもらいたいという願いと、普段「敷居が高い」と言われる店構えを気にせずに気軽に京町家をお見せするいい機会なればと考えている。

店舗は築120年程の典型的京町家で、最近さすがにあっちこっちの傷みが目につくようになった。毎年展示会を機会に修繕するのが町家保善の意味でも意義があり、特に町内は歴史的保存地区に指定されているので、修繕するのも京都市に届出する仕組みになっている。

店は現在仕事場としてのみ使用しているが、昭和初期には住み込みの従業員が3名と家族4名が生活していたと父から聞かされたときは驚いたことを思い出す。

さて今年の展示会テーマ商品は私が力を入れている「摺箔帯」と「ぼかし染め」である。どちらも腕利きの職人達の技を「ぎをん齋藤」のテイストでご覧に入れる。

47年振りに「春の雪」三島由紀夫を読む

夏休みの無聊を慰めるために久し振りに「春の雪」を引っ張り出して読む。学生時代この本が出版され私は夢中で読みきった事を記憶している。

読み終え、もし自分に女の子が生まれたら「聰子」と名付けようとその時決めた、そして後年、長女の名を「聰子」と命名した。それほどこの悲劇のヒロインに傾倒してしまったのである。子供っぽいと笑われるかもしれないが、事実だからしようがない。

今回読み返して三島美學の素晴らしさに二度目の感動を覚えた。流れるような格調ある文体で描かれる華族世界の表と裏、主人公「清顕」の繊細すぎる美醜への感受性、そしてヒロインは仏門に入り、主人公は死を迎えるという、ありそうな結末だが一気に流れに引き込まれる。

現代の純文学は余りにも日常的すぎると感じている私には久し振りに重みのあるしっかりとした後味を残してくれた。現代文学が「お茶漬」なら三島文学は脂の乗った「ステーキ」のように。

ご存知のように「豊饒の海」三部作が完結した後、彼は市ヶ谷の自衛隊駐屯所で割腹自殺をし自らの美学を完結させる、この事件によって「三島由紀夫」の名と「聰子」が私の脳裏に深く刻まれることとなった。