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2016年/09/08
夏休みの無聊を慰めるために久し振りに「春の雪」を引っ張り出して読む。学生時代この本が出版され私は夢中で読みきった事を記憶している。

読み終え、もし自分に女の子が生まれたら「聰子」と名付けようとその時決めた、そして後年、長女の名を「聰子」
と命名した。それほどこの悲劇のヒロインに傾倒してしまったのである。子供っぽいと笑われるかもしれないが事実だからしようがない。

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今回読み返して三島美學の素晴らしさに二度目の感動を覚えた。流れるような格調ある文体で描かれる華族世界の表と裏、主人公「清顕」の繊細すぎる美醜への感受性、そしてヒロインは仏門に入り、主人公は死を迎えるという、ありそうな結末だが一気に流れに引き込まれる。

現代の純文学は余りにも日常的すぎると感じている私には久し振りに重みのあるしっかりとした後味を残してくれた。現代文学が「お茶漬」なら三島文学は脂の乗った「ステーキ」のように。

ご存知のように「豊饒の海」三部作が完結した後、彼は市ヶ谷の自衛隊駐屯所で割腹自殺をし自らの美学を完結させる、この事件によって「三島由紀夫」の名と「聰子」
が私の脳裏に深く刻まれることとなった。





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2016年/09/05

信を持って応募した「辻ヶ花訪問着」が敢え無く落選した。日本伝統工芸展は若手工芸作家の登竜門として多くの作家が競って応募する日本を代表する応募展である。

なにを隠そう私も以前自作の「羅」織りで新人賞、金10万円をもらった実績がある。しかし悲しいかな老眼のために織り傷を作ることが多くなったので応募するのは諦めていた。

今回は染物の分野で再挑戦を試みることにした。今回の作品「辻ヶ花染」における私の役割は、プロデューサーとして白生地の制作と絞り手法の工夫にアドバイスを与え、数人の職人達と完成させたもので私自身が染めたものではない。

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ただ、あまりに出来栄えが良かったのですぐ商品にするには惜しいと思い応募した次第である。

私くらいの歳になると気鋭の作家を目指すという野心はなく、気に入った作品ができたので審査員にご覧に入れよう、万一入選して巡回展示されたら多くの人に桃山時代の辻ヶ花に限りなく近い染色品を見てもらいたいと願ったからである。

残念ながらその思いは叶えられず手元に戻ってくるが、それほど落胆はしていない。今回の作品には自信があり十分満足しているので、他人の評価は気にならないというのが本音である。

ものづくりは突き詰めれば自己満足の世界で、世間で認められるかどうかは別の問題である。





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2016年/08/25
日本の幕末19世紀に「御所解」様式が出来上がり、流行は明治時代に及ぶ。

武家、公家屋敷に勤める御女中の制服的な発展を遂げた御所解は四季草花を場面いっぱいに描くのが原則であった。もっとも御女中の身分によって模様の量や質が違っていたらしく緻密に作られたものから粗雑なものまでピンキリである。

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同じ時代ヨーロッパで流行し始めたのがアール ヌーボー(新しい芸術)とジャポニズムである。「葛飾北斎」の絵や版画に魅せられたフランスの若いアーティスト達が「新しい芸術」運動を展開し、それ以前のブルボン王朝時代のものとは一線を画したモダンを創り出した。

特に19世紀末頃には東洋的な雰囲気と表現が如実に現れ、ガラス工芸で有名なエミール ガレやドーム兄弟の作品には日本の画法、表現を強く意識した作品が数多く見られる。

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私の持論である「物は人が創るのではなく時代が創り出す」を検証する意味でも、私が試みる「ソワレきもの」は彼らのガラス工芸をヒントに制作するもので、結局19世紀末の美意識をヨーロッパ側から再度見つめ直す作業に他ならない。



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2016年/08/06
ブログで意見を述べるようになって、いろんな人からキーワードを頼りにメールを頂くことがある。

先日も「蓮」のことを何度かブログにアップしていたのを見て、見知らぬ人から蓮糸があるから買わないかとお誘いを受けた。

以前には「我が社に蓮糸が
1kg有るから売ってもいい」など興味あるお誘いを受けたが具体的に進展することはあまりない。だが今回ある人から紹介されたS社とはうまく行きそうな予感がしている。

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私が何故「蓮」にこだわるかというと、糸質が野趣でありながら柔らかさが格別に素晴らしい。水草らしく水分をタップリと含んだ優しさが他の植物繊維とは大いに異なる。

まだ染めたことはないので酸性染料もしくは直接染料でムラなく染まるかという問題はあるが、やってみる価値は十分あると思う。糸の状態で入手可能ということは当社の機で布を織ることもできるから楽しみは倍増する。

将来は帯としてだけではなく僧侶の袈裟や打敷きなど仏教関係の使用も考えられ企業としてもおもしろい素材になるのではないか。人との出会いは限りなく果てしない、生きているとはこういうことなのだろう。



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2016年/08/05

蚕が作り出す繭は一様に同じように見えるが、糸にするまでの手順によって生糸から紬糸まで表情はすっかり違って見える。

更に生地に織り上げる手順によって全く違ったものになる。絹100%には違いないが手順によって上質、高級なものから絹には見えない安っぽいものまで様々な生地が作られている。

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当然手順が手間のかかるものは高額になり簡単にできるものは安価で売られ、ピンからキリまで20倍くらいの差が出ると思われる。

安価なものは少々手を加えても高級感は出ない、逆に上質なものは指示した色とは違う色に染まっても、それがいい色に見えるから不思議である。

先日もいつも通り「御所解」を最上質の生地を使って染めたところ、普段とは違う出来栄えに改めて生地の大切さ不思議を体験したしだいである。

陶器の土、寿司のネタと米、建築の建材、すべて素材の重要性を解りやすく教えてくれる。全て値段相応、「値段はタダ取らない」と昔から言われるように高いものにはそれだけの理由があり、安い物も同様である。



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