ぎをん齋藤
ぎをん齋藤

女将思い出語り

家業の有難さ

今春まで引きずってしまったコロナ騒ぎも収まらず、経済がどん底にまで落ち込み、衣食住にまで国民が右往左往する事になるとは、想定外の事態です。今夏にオリンピックを開くか、否かの論争が毎日テレビで映し出されておりますが、国民の現状はそれどころではなく、「明日をどう生きていくか…」の困窮状態だろうと思います。

当店の経営もそれに洩れず、昨年対比でやはり何割かのマイナス計上となっております。しかし、若い社員たちが昼夜アイデアを出し合い、販売方法や形を変えて、何とか営業に努力してくれているおかげで、各々、家族を路頭に迷わす事なく、ワンチームとなり、近い将来、明るい世界が来るであろう事を期待して頑張っております。

そんな希望を持てる基本は、やはり二百年近く続けて来た家業の実績と社会的信用度に依る、社員の安心感から生まれる仕事に対する前向きな意欲かと感じます。

社員の精神的安定は一日にして築かれるものではなく、始祖の江戸時代からの賜物と痛感し、戦争、不況、バブル…と様々な世相の中に於いて媚びる事もなく、傲る事もなく、坦々と日々感謝の心を持って家業を引き継いで営んで来た心得を、我々が謙虚に受け継ぎ、身体の中に刻み込む事が要と思います。

昭和30年代の店先

 

一言で家業と言っても、ある時は思い切って投資をして事業の拡張をしなくてはならない時もあるでしょうし、又、生き残りをかけて縮小する勇気も出さなくてはならない時もあるのですが、一番に失ってはいけないのが社員とその家族の生活です。

それが家業に課せられた生命線と、この年齢になってやっと判って来た事でした。

 

子々孫々続けられますように!