ぎをん齋藤
ぎをん齋藤

女将思い出語り

やっと完成!長絹袋帯

コロナ禍が、3年余り続き、仕事も急ブレーキをかけられたように、急停止を余儀なくされて、未経験の時間の流れを一日一日と過ごしている間に 「あっそうだ、この間に 新しい着物や帯を創ろう!」と思いたち、私自身が欲しかった夏帯で 長絹組織の織物で出来た夏袋帯に取り組みました。

私は能舞台で拝見する長絹の狩衣や直垂の その雅な気品と格調にすっかり魅了されて、何とか袋帯に再現して完成させたく 2年前から構想を練り、実現に取り掛かりました。(上)齋藤コレクション 江戸初期本歌古裂
(下)本歌より再現した袋帯

早速 我が家の資料本を手当たり次第にページをめくり、舞台で観た 記憶に残っているシテ方の高貴な長絹装束姿を手繰り寄せて、この雅な格調に満ちた袋帯を創りあげ、完成させる過程が非常に楽しく 又、完成に近づく充実感が、心の中に満ちたりてきます。

この夏に6柄模様が揃い、近年世の中に皆無だった長絹帯が完成しました。
何か機会があれば是非ご覧頂き、感想やご意見を伺いたいものです。    拝

 

自身にも問う

真夏日のような陽ざしに既に散った桜木の隣りで新緑した柳の葉がゆらゆらと春風にながれています。

この4月に私は、人生初の全身麻酔にて年齢相応の腰脊椎狭窄症の診断で手術を受けました。担当医の先生より、現代の数々多い治療法を伺いましたが、私が、先生に「ご自身が、同じ症状なら、どうされますか?」と質問したら、即座に「手術をうけます!」とのご返答にて私も即決しました。

ここから二週間外科病棟の入院生活が始まったのですが、同棟には共に苦痛や悩みを抱えた同朋達が大勢いらして、その人間模様が、実に興味深いのです。

それは、術後の回復に伴い、少しずつリハビリを始めるのですが、各々の状態に合った歩行補助具に支えられて廊下を行き交うのですが、そんな折 向こうから屈強で日焼けした強面のオジサンが、首にドーナツ状の補助具を巻いて来た時、ふと慈悲深い 優しい顔付きで道を譲ってくれたり、また、

超セレブ風で「ツン!」と気取ったご婦人達がお互いに慰め合い、励ましている様を観ると、実に興味深く、私はその温かく、穏やかな、空気感に包まれて背中の痛みも忘れるほどに心が満たされました。

 

我々は、社会の中では、地位 名誉 財産等で飾られた自身が、「闘病」と言う平等な立ち位置に置かれた時、無意識に徳を積んで 1日も早い回復を渇望する心境の変化なんだろうと想像します。

何故 社会に戻るとこの心が壊れてしまうのでしょうか?
現実社会は、競争世界なんでしょうね。

 

自分自身にも問う!

景気動向指数が上がると、、

今年も桜が4月を待たずに散り始めて、春の過ぎ去る速さに気持ちが急かされる思いですが、京都の街中は移動制限がなくなり、観光客と花見客で3年振りの賑わいです。

その様子を見ていると、だんだんと、人、物、お金の動きが活発になり、以前の好景気を取り戻すのかなぁ、、と期待感が湧いてきます。

近年数十年は不景気による消費の冷え込みと、世界的マーケット移動が有りました。

私も仕事について半世紀、そんな経済と流行り色との関係で、興味深い傾向が有るのです。

不景気に流行る色は着物と帯で例えると、白目に近い薄い色の組み合わせで、存在感の希薄です。

逆に景気動向指数が上がる気配を消費者が感じ始めると、濃くて深い色めに惹かれて、上品で洗練された、落ち着きのある組み合わせに移行していきます。これは、私の実感です。

※雑誌「ミセス」’94  10月号掲載《齋藤貞一郎の染織譜~10月》より

 

1日も早くこの指数がどんどん上がり、多くの女性達に好景気色を愉しんで欲しいです。

当店も期待して、せっせと洗練された深い色めの着物を製作し始めました。乞うご期待!