勇退
弊店でお世話になっている染めの職人さんが、去る12月15日をもって廃業されました。
特にお仕事のクオリティが下がった訳ではなく、矍鑠としていらっしゃるのですが、御年76歳、50数年もお仕事一筋にやって来られたと聞けば、我々としてもお引き留めする言葉が出て来ません。
西陣織や友禅染という伝統的な染織の世界では、業界全体の高齢化が問題となっておりますが、実際に70代の職人さんというのもたくさんいらっしゃいまして、中には急に病気で倒れられたり、縁起でもないですがお亡くなりになったり、というケースもございます。
今回ご廃業を決められたKさんの場合は、その後に我々がお仕事を依頼する代わりの職人さんもご紹介いただき、各所に不都合が出ないよう十分な配慮をなさった上での廃業、という形でしたので、後に残される者としては非常に有難いことではありました。
Kさんご自身も、まだお仕事が出来る状態でのご廃業ということに関して忸怩たる思いがあったそうですが「立つ鳥跡を濁さず」の精神で、今年を区切りにご英断をなさったとのことでした。
仕事を終えるところまでも周囲のことを考え、自身の美学を貫く姿勢に、職人の気概を見た気がしました。
本当に長い間、お疲れ様でした。