ぎをん齋藤
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田中創造

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京都・祇園の老舗呉服店『ぎをん齋藤』で、営業・制作に携わっております。古典に学び現代に活きる、オリジナルきもの・帯の創作舞台裏をお届けします。
~お問合せ~
ぎをん齋藤 田中 創造(たなか そうぞう)
☎ 075-561-1207 または 090-8880-1894(直通)
✉ gionsaito-tanaka@outlook.com

テーマに沿って

さてさて、2週連続の東京出張でございました。

今回は銀座のホテルを拠点としましたが、やはり街中の人出が激増しておりますね!活気が戻って来て嬉しく思うと同時に、感染症対策に気をつけなくては…と不安感も少し増したようです。

今回は陳列会直前という事で、当日にご都合のつかない方々にお会いするのが目的でしたが、あるお客様から事前にご提案のテーマをいただいておりました。

 

◆師走の銀座陳列会、12月8日~10日です!◆

 

それは「白鳥の湖」。そう、あまりに有名なバレエ作品のそれです。

田中はバレエには馴染みが薄く、チャイコフスキーの音楽は学生の頃から好きでしたが、チャイコの「三大バレエ作品」と呼ばれるいずれも完全には見たことがありませんでした。

ですが今回ありがたい事にこのようなきっかけをいただいたので、動画配信サイトで1幕~終幕まで全てを通してじっくり鑑賞しました。

…年を取って良い事があるとすれば、これまで馴染みの薄かったものでも何らかの取っ掛かりを見つけて、それなりに愉しめるようになる、という事がありそうです。若い頃は色んな偏見や先入観、訳の分からないプライドみたいなものが邪魔をして素直に作品に向き合えなかったり、物の見方の「物差し」の種類が少なく、目盛りも大雑把だったりして、いつも慣れ親しんでいる「楽しみ方」以外の受け容れ方を見つけられなかったりしたものですが…人間変わっていくものですね。

古典的なお着物の柄には「白鳥」のモチーフは少なく(写真は本文の内容と関係ありません)、水辺の情景についても圧倒的に「川(流水)」や「海(波)」のモチーフが多く、況やドイツの深い森と古城の雰囲気などは、ぎをん齋藤の得意とするところではありません。

ので、色々と知恵を絞って想像力を働かせて、何とかかんとかご提案にこぎつけたのですが、結果的に自分でも満足の行く組み合わせが見つかり、お客様にも大変喜んでいただくことが出来ました!

 

…今回の経験で感じたのは、こういう風に「テーマを与えられ、それに沿って考える」という事が、自分は厭ではない、という事です。着物と帯の地色や柄などの要素を組み合わせることで、様々なストーリーを(かなり具体的なところまで)暗示させることができる、しかもそれが着こなしの文化として定着している、これは世界的に見ても珍しい、恐らく他に類を見ないことだろうと思います。

こういった楽しみ方も含めて、日本の染織文化の素晴らしさを更に研究し、内外へ発信し続けて行きたいと思います!

素敵な気づきを与えて下さったM様、本当にありがとうございます(^^)/

 

※まったくの蛇足の余談ですが、二条城近くの「神泉苑」では、怪我をした家鴨さんを保護されています。
京都観光の途中にお立ち寄りになる事がありましたら、覗いてみて下さい。入口付近の高札には謡曲「鷺」との関連が記されていて、ちょっと愉快な気持ちになります(笑)

舞の会とNEO美人画展

週末、東京・国立劇場にて「舞の会」を拝見して来ました。

いつもご贔屓いただいてお世話になっている、五世井上八千代様と安寿子様の舞台を拝見するのが主たる目的でしたが、他流派のお家元クラスの方々の舞を同時に見られたのは、一粒で何度も美味しい素敵な機会でした。

安寿子様の「邯鄲」、八千代様の「珠取海女」、いずれも心が洗われるような研ぎ澄まされた舞でしたが、他流の方々と見比べると、井上流は能楽との関わりも深いお家柄もあってから、全体にキレのある動きが多いですね。

田中は今のところ能楽の方が馴染みあるせいか、とても見やすいというかすんなり入って来るというか、そんな気が致します。

先月の文楽劇場の舞台と立て続けに舞の会を拝見したので、田中の中の舞踊熱が俄かに高まって来ました!これから少しずつ舞踊の世界も勉強していきたいと思います。時間とお金が足りません…(´;ω;`)

 

さて、同日のお昼には、表参道の複合文化施設にて、現代アート作家「東村アキコ」様の「NEO美人画」展にも行って参りました。

皆さんご存知の通り、東村アキコ先生と言えば今をときめく人気漫画家として広く知られていますが、あえて「現代アート作家」とご紹介させていただいたのは、今回の個展で展示された作品をすべて「NFTアート」としてデジタル世界の作品として販売もされているからです。

現代アートとか古美術の市場シーンにお詳しい方ならご存知だと思うのですが、「NFTアート」とは、仮想通貨にも使われているブロックチェーンの技術を応用したデジタルアートのことで、普通の画像データなどと違って、複製や改変が不可能な事が大きな特徴です(というより、複製・改変されてもきちんと元のオリジナルデータに「これがオリジナルですよ」というラベルが貼られており、コピーとの識別が可能である、という方が正確なのかも)。

弊店も日本の古美術界のメッカ的な地域に立地しておりますが、これまでアート界隈の市場は非常に閉鎖的で間口や流通の経路も限られており、特別なコネクションを持たなくては質の高い取引は出来ないことも珍しくありませんでした。

ところが「NFTアート」の場合は、物がデジタルデータなので取り扱いや持ち運びの心配もありませんし、出品されているマーケットプレイスにアクセスさえすれば、世界中どこの誰でも売買が可能です。また、最近は凋落気味の仮想通貨に代わる投資対象としても注目されており、個人の自撮り画像が何億円という価格で落札された、というニュースをご覧になった方も多いのではないでしょうか。

田中は専門家ではありませんので詳しくないですが、一般的な「漫画家」さんと呼ばれる方々でNFTアートに取り組んでおられる方も少ないのではないでしょうか。東村先生と言えば、紙面とデジタルの両方で連載を展開したり、日韓で同時並行して作品発表を行うなど、他にはない斬新で挑戦的な取り組みでも有名ですが、また新たな領域を開拓されたな…と感嘆いたしました。

個展自体は27日までで終了となりましたが、作品の方はネット検索で簡単に見つかりますので、ご興味のある方は是非ご覧になって下さい。「ぎをん齋藤」ファンなら「お、これは?」と思われるような着物や帯を纏った女性も出て来ますので、とっても面白いと思います。

新しい画材になり得るような素敵なお着物・帯を、今後もご提案して参ります~♪

二十五世 追善能

昨日、岡崎は観世会館にて「二十五世 観世左近元正 三十三回忌 追善能」に参りました。

二十六世ご宗家、観世清和師とご子息である観世三郎太さんとの共演、名作との呼び声高い「砧」を拝見しました。

全体にゆったりとしたテンポの能で、派手な装束や作り物が登場したり、戦の場面があったりする訳ではないので、演じる側としては難しい曲かと思うのですが、都から戻らぬ主人を想って心を病み亡くなった女性の恨みを見事に表現されていたと思いました。

また、地謡は京都観世会の大黒柱、片山九郎衛門先生を地頭として一糸乱れぬ一体感で、シテの執念が憑依したかのような息の長い、情趣溢れる謡いを魅せて下さいました。これは聴き応えがありました。

観世会館まで徒歩5分という最高の立地に住まいしながら、あまり頻繁には伺えていない田中ですが、今後もきっかけを見つけて沢山の舞台を拝見したいと思います。