摺箔の近況
しばらく摺箔のことを書かなかったので制作が停滞していると懸念されるといけないと思い、近況を報告してみることにした。
現在のところ着実に深化し、金銀摺箔の持ち味が発揮された作品が出来つつある。
「今までに見たことのない物だがクラシックだ」と
「柳さん」に言わしめた「金銀摺箔波濤図屏風」は
「小田原文化財団」(杉本博司氏が設立した財団)に旅立って行った。
現在、作品番号3 「金銀摺箔日月屏風」を制作中で、本年度中に完成させたいと思っている。
続いて「金銀摺箔雲龍図屏風」も下絵の段階まで仕上がったので、生地が用意できたら早速掛かりたいと思っている。
この「雲龍図」は「建仁寺」に伝わる墨絵を摺箔でアレンジした作品で水墨とは違った生命力を龍に与えることができそうだ。
同時に別の職人による「摺絵」の制作も始めており、試作として光琳の「杜若」を手本に「八ッ橋」染帯を試作中である。
これは摺箔に摺絵を組み合わせた初の試みで成功すれば力のある帯になると確信している。
何度見ても摺箔はハッキリとした個性と「力」が現れる技法だと感心する。
その原因は純金、純銀の持つ、素材としてのゴージャスさと桃山時代由来の絵柄である。
この技法と巡り合った私は幸運であったが後々まで更なる深化で日本の染織文化の発揚に貢献する事を願っている。
それでは今まで未公開であった「金銀波濤図屏風」の全開図を御覧に入れる、呉服屋がアーティストになった記念写真。(笑)