ぎをん齋藤
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ブログ

齋藤貞一郎
『ぎをん齋藤』の主人

齋藤貞一郎

ぎをん齋藤のきものや帯のお品物をご紹介する中で、
物づくりのこだわりを綴っております。
定番商品の御所解をはじめ、齋藤織物の袋帯をご紹介したり、
また、きものと帯のコーディネートを更新して参ります。

珍裂屋主人の逝去を悼む

ぎをん齋藤の近くには裂を専門に扱う美術商が二軒ある。

一軒は今昔西村さんでテレビのコア 京都にも登場された店である。もう一軒が、その斜め向かいにある「珍裂屋」中村さんの店である。昨日その店主、中村孝太郎さんが83才の生涯を終えられた。

 

中村さんは私の裂の師匠のような存在で40年以上、いろいろご教示いただき、私も多くの古裂を購入してきた。もう20年ほど前のことだが、中村さんの店先に桃山時代の縫い箔(下記に掲載の裂)が展示してあった。

 

有名な裂なので欲しいと思って値段を尋ねると、80万円だという。当時まだ40歳代であった私は、80万円は大金で、直ぐに返答はできず一晩考えたのだが、逃すと二度と手に入らないと思い、翌朝に返事を持って珍裂屋さんを訪れたが、もうそこにはなかった。私が帰った後すぐに別の客が買ったと聞かされた。それ以後二度とこの裂とは出会うことがなく、今でも後悔している。

 

それからは、悩むのは10秒以内と心に決めてから買い逃すことはなくなった。そんな辛い思い出と共に中村さんは泉下に赴かれた。

心よりご冥福をお祈りします。