ぎをん齋藤
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「クリムト」

先日、TVでクリムトの名画「アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像 」を主題にした作品を観ることができた。第二次世界大戦中、ドイツ軍に接収された「アデーレ」を元所有者から返して欲しいとの依頼を受け、若い駆け出しの弁護士とユダヤ人の元所有者が見事に最高裁判所まで勝ち抜き、ウイーンの美術館から返還を受けると言うストーリーである。これはフィクションではなく、実話だと解説されて一層の感動を覚えた次第である。

 

クリムトは20世紀初頭、ウィーンで活躍した奇才で「アール  ヌーボー」の立役者と言える。「アデーレ」は同じ女性をモデルに何枚か描かれたらしいが、映画で扱われたのは全面黄金で装飾され、構図が非常に複雑な1枚である。

 

 

それは慶長小袖にあるような意味不明の取り方(線で囲われ他の部分から独立した面)の中に、また不思議な黄金の装飾が施されているのも共通している。モデルの女性が身につけている物は、ゴージャスなダイヤモンドのネックレスと黄金のブレスレット。まさにアール ヌーボーの最盛期を象徴する装身具である。

 

黄金色に魅せられた人々が時代を問わず人種を超えて存在してきたのは事実で、私のように21世紀の人間でさえ共感を憶えるのは、人間の本性に黄金が仕掛ける魔法のようでもある。