ぎをん齋藤
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「室町」という時代

今私が一番興味あるのは室町時代である。

地味な印象があるこの時代は禅宗、茶道、能の芽吹いた時代だから渋い時代だと言える。

また現代の日本社会の原型が出来上がったのも、この時代だと言える。

 

室町幕府を開いたのは「足利尊氏」、この人は誰でも知っているビッグネームだが、3代将軍、足利義満以降の幕府運営は中央集権が浸透せず、地方の豪族の勝手な動きを抑えられずに戦国時代へとなだれ込んでゆく。

全ての階層に渡って「下克上」つまり武器を持って戦う時代に突入したと言える。

力の無い人々は現世の苦しみを来世の希望に置き換えて生活する様でもあったに違いない。

 

またこの時代、ほんの些細ないざこざ(例えば、頭を下げる下げない、笑った笑わない、等)で民衆或いは武士をも巻き込む大騒動に発展することが日常茶飯事だった(「太平記絵巻」にその様子が描かれている。)といわれ国民が熱く燃えた時代であったらしい。

「禅宗」が中国から新興宗教としてもたらされ、武士階級を中心に他力を願わず自らを救済するという厳しい戒律を受け入れ、そこから茶道や幽玄の世界をテーマにした「能」が確立した。

まさに中世から近世へ生まれ変わる「産みの苦しみ」の時代が200年以上続いた。

 

そんな過酷な日常の時代で、あの華麗で繊細な「辻ヶ花」が生まれたのは不思議とも思えるが、あのほとばしるような躍動感は時代が産んだ産物に違いない。

それに比べると現代はどうだろう、お子ちゃまの時代「かわいい!」の一言で価値が決まる平和で幼稚な時代である。

それがいけないというわけでは無く、ありがたい時代なのだが作られたものを見比べると情けないくらい弱々しい。

古い物の中に真美を求め愛でる眼こそ古美術を愛する心である。