ぎをん齋藤
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何とかしてあげたい若い職人さん

昨年後半、探している腕の良い職人とは別に、2人の壮年職人が仕事の依頼に「ぎをん齋藤」を訪ねてきた。かねがね、将来を見込める職人は必要だから探すよう社員にも申し付けてあるから、大いに期待して話をし、試しに仕事も出してみた。

彼らに共通する類似点は、数多くの染め工程を自分一人でできると言う点であった。

各工程一つ極めるにも年月がかかるのが普通だが、彼らは器用にやれると言う。しかし残念ながらどれも不十分な完成度で「ぎをん齋藤」の仕事には不適格と判断せざるを得なかった。彼らにはもう一つ共通点があり、歳は40歳を過ぎ、妻子があるのである。

もっと若い、例えば20代の人なら当社の社員として教育していくのは可能だろうが、家族持ちでは私の責任が重すぎる。困った! どうしてあげれば彼らがこの染色業界に留まれるか? このような現象が起こる可能性は予期していた。

今でもいわゆる「作家物」と称して高い付加価値を取ろうとしている業者が横行しているらしい。業者にしてみれば器用な職人を「先生」とおだてて、売れなければ使い捨てにしている噂を聴いたことがある。業者にしてみれば、この着物不況の時代、売上を増やそうと懸命である。また、若い職人はいっぱしの染色作家と言われたい。この二つの思惑が作家ブームを起こしたのだが消費者は賢明である。良いものと悪いものの区別は見ていれば分かるようになる。

こんな例えもある、「文化の進んだ地域でよく売れるものを文化の遅れた地域へ持っていっても良く売れる。」だがその逆は真ならずと。残念ながら、今のところ若い職人を守る手立ては立っていない。