ぎをん齋藤
ぎをん齋藤

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摺箔の前に立ちはだかる壁

摺箔は、シェープの綺麗でダイナミックなものを表現するには申し分がない技法だが、

細かいディテールを描くのが難しい。

期待していた「日月図」の出来がイマイチだ…

当然これから手直しをして納得のいくまで手をかけるつもりだが、最初の一瞥が気に入らないと滅入ってしまう。

いつもうまくいくとは限らないのが物作りだか、気持ちがすっきりしない。

それで職人と毎日連絡を取り合って善後策をやり取りするが、中々決定的なアイディアが浮かばない。

彼の技術は業界でも屈指の腕だから色々と提案し、試験裂を見せてくれるが、これと言った改良案が固まらない。

私の提案する「摺箔」は過去にあったものだが、それを誰も見たことのない、

新しい「摺箔」に完成させたいのであまり技巧に走って、違うものになってしまうを恐れている。

「辻ヶ花」の歴史を辿ってみても、初期のものは無地生地に絞り染めだけでできていたが、その後は墨仕上げや、地色を染め分けにしたり刺繍と併用したりと変貌していくが、私は初期のものが好きだ。

この苦しみが生きる糧になっているのだから楽しんで苦しむことにしよう。