ぎをん齋藤
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杉本博司氏に高評を仰ぐ

 

「摺箔」のほぼ完成を機に、敬愛する杉本博司氏に高評を仰ぎたくメールをした。早速、返事をいただき、先日わざわざのご来駕いただいた次第である。誠に有り難い、感謝。

私は年始の挨拶もそこそこに、おもむろに「摺箔」波図を彼の前に広げてみせた。その瞬間、彼の眼光が鋭くなったのを、私は見逃さなかった。あの目つきは良いものを見つけた時の彼の反応である。

7〜8年前「正倉院裂」を手に入れ、彼に見せびらかした時と同じ目である。「気に入ってもらえたな!」と直感したので「摺箔」の技法や素材の説明をしたが、彼の返答は「ウン、ウン」を繰り返すだけで頭の中では別のことを考えていることはすぐにわかった。きっと杉本流の「摺箔」活用法を考えているに違いないと判断する。

私の喉は話し続けるのがキツイ状態なので、用件だけを彼に伝えようと懸命に声を出した。「ぜひパリでこの摺箔を披露したい、どうかお力添えをお願いしたい。」しかし、相変わらず「ウン、ウン」と言うだけで上手く誤魔化されてしまった。結局、具体的な話には至らず、別の話題へと進んでしまった。これで一応、杉本さんの審美眼には合格したが「摺箔」の技法にはまだまだ「奥」があり、自分で納得するものが出来上がるには1〜2年は掛かると思う。

さらに深めて日本の伝統的な染色技法の一つ「摺箔」を現代の「美」として欧米の目利きに評価を問うつもりである。