ぎをん齋藤
ぎをん齋藤

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久々に入手した「辻ヶ花」

最近トンと売物を見かけない古裂の世界だが、珍しく「辻ヶ花」の売り物があったので手に入れた。

制作年代は1590年〜1600年あたり、辻ヶ花の最後期の作品だと私は見た。

その理由は生地は従来の「煉貫」(ねりぬき)が使われているが「疋田絞り」が見かけられるので「辻ヶ花」の全盛期は過ぎている。

まだ金箔が使われていないので「慶長時代」には入らない「天正時代」後期だと思う。

表具裂に使われていたと見えて3片に別れている。墨の仕上げは余り上手くはなく、絞りの技術も稚拙である。

極めて細い線が見かけられるが現在では、こんな細い「面相筆」は売られていない。

私は「天文」、「永禄」、「元亀」時代あたりの裂が欲しいのだがなかなか売り物は出ない。

文句を言い出せばきりがないが、適切な値段だから買い逃す手はない。

そう言えばNHK大河ドラマの時代背景はまさにその「辻ヶ花」全盛時代である。

あの時代にピンクの野良着や首巻を身につけているのは、どう考えても不自然だ。

歴史的時代考証がなされてなければ視聴者に嘘を伝えることになるからNHKの責任は重い。

 

圧倒的な迫力

友禅染めの迫力の無さを指摘している私が 顔料の使用を試みていることは、

以前からブログをお読みいただいている方はご承知だと思う。

友禅染めが着物の中核と位置づけられるようになったのは江戸時代中期頃で現代まで変わらない。

着物といえば「京友禅」として全国に広く知られている。

その特徴は模様の縁に糸目を施し化学染料(明治時代以降)による色挿が基本とされている。

それに対して仕上がりに迫力が欠けることを指摘し、顔料、岩絵具の使用も推奨してきたのが私である。

その最初の作品が出来上がった。

下記に掲載した「牡丹図訪問着」をご覧いただければ 直ぐにその圧倒的存在感、迫力をご理解いただけるであろう。

全て「緑青」「群青」など岩絵具を使用して染め上げた逸品である。

これを可能にしたのは卓越した職人の「技」とバインダー(接着剤)の進歩である。

絵心あって糸目がなくても彩色できる技術力が必要ある。

私もこの作品を大変気に入って本当は売りたくない気持ちだが、それを売るのが私の生業であるからしょうがない。

いつの世も時代とともに消費者の好みは変化していく、

その変化を捉え、作り手は自分の仕事の幅を広げていかなければ消費者から見放されてしまう。

不況を嘆く前に自分の足元をしっかり見つめることだ。

次作は「フェルメール」が愛した「ラピイズラリー」を使ってブルーを基調にした印象派のような優しい着物を作りたい。

コレクション

圧倒的に男性が多いと思われる骨董蒐集の道楽。

女性の比率は10%程ではないだろうか。

その理由は男の私にはよく分からない。

蒐集で問題なのが本物か偽物かのこの一点に尽きる。

まあ例え偽物でも本人が納得して満足していれば、何も問題はないのだが、思わぬ安くで手に入れた物が本物で大儲けしたいなどと言う不純な願いが出るからコレクションが台無しになる。

先日も海外ドキュメンタリー番組で古書の偽造を扱った番組があったので興味深く観たのだが、「コペルニクス」や「ニュートン」初版本を偽造し、逮捕され刑期を終えて番組に出演している張本人がその手口を公開すると言う珍しい番組であった。

彼によると紙に時代がかったシミを付けたり、オリジナルにある誤印刷やハンコの誤字まで徹底的に真似ると言うから専門家でさえ見過ごして本物の証明書を付けて博物館に納めてしまうらしい。

またこの話とは別に中国の贋物販売人は何千年前の棺に偽物の副葬品を入れて地中に埋め戻し、お客に今初めて発掘したかのように現場で掘り起こして贋物を本物に見せかけると言う手口の話を聞いたことがある。

ここまで手の込んだ仕掛けがしてあれば誰でも騙されて当然であろう。

世の中にはそんな甘い話は無いと心せねばならないのだ。