ぎをん齋藤
ぎをん齋藤

女将思い出語り

建具のころも替え

十月に入り秋の透明感ある朝晩の空気を期待してましたが、あら!まだ残暑が続き温度計では夏日を記録しました。それでも我々の京都では十月一日より建具のころも替えをのれんと共に準備して掛け替えます。

夏の簾戸から月見障子の建具や襖に替え、更にそれまで敷きつめられていた籐網代を取り除き、畳表となります。今や建具を季節毎に取り替えるなんて一般家庭では死語になりつつあるでしょうし、又、この建具を収納する場所すら住まいの設計時点で除外されている現代に、だんだんと季節の変化に対して鈍感になりつつあるのかも知れません。

 

産まれた時から完全空調設備の中で養育された子どもたちは、季節に関係なく望む物をいつでも食せる事により、更に「季節感」を忘れ物として育つ危うさと共に、追いうちをかける様な地球の温暖化も加わります。

このような無機質的な日常の中で京都へ旅して来られると「建具のころも替え」によって、ふっと我に返ったように感動して下さいます。季節を感じる事は五感を刺激する事で、感受性が育まれて美意識が高まります。大切な日本人の本性が再復活し、国民の独自性の取り戻しです。

 

着物のころも替えも、夏の麻とか芭蕉とか夏草の素材から、真綿、絹等と冬に向けての生地へと変わり、着物と帯との色合いも暖色系の組み合わせへと移っていきます。この様に、季節毎に四季にこだわり一年の変化を意識的に自ら進んで行わないと我々は虚空的な実に寂しい人生を過ごす事になってしまいそうです。

是非この「建具のころも替え」を済ませた京都へお運び下さいませ。きっと御自分の日本人の感性を取り戻すことでしょう。

お待ち申し上げます。