ぎをん齋藤
ぎをん齋藤

女将思い出語り

私の古渡更紗帯

早いもので、かれこれ四十年ほど前に主人が古裂に興味を抱き、近所の骨董屋廻りを始めました。その頃は古裂に、さほど骨董的価値を見出す人が少なく、もっぱら茶道具人気でしたから安値で買い求められたので、徐々に収集量も増えて参りました。

そんな中で特にインドより渡って日本に入ったインド古渡り更紗が好きで「このままにしておくとボロボロに風化してしまう!」という危機感から、古裂を細かく切り石畳風に組み合わせ、更にそれらを象の糞で染めたインド木綿地の上に貼りつけて、一本の名古屋帯に仕上げました。主人にとって人生初めての作品となりますが、商品にするには未だ自信がなかったので、私の手に渡されました。

今に至り、一点一点の更紗を観ると、現代ではとても高価な古渡笹蔓等、古渡を代表するようなインド更紗が集結して一本の帯となり、宝物を身にまとっている感覚です。

私は日常、着物を着る時に「今日はどんな帯をしめようかなあ…」と迷う時に、いつも手に取るのがこの更紗帯で、草花の帯と違い、インドから大陸を渡って日本にやって来たこの異国情緒感が日本の着物にマッチして新しい雰囲気を醸し出し「いつものと違う私!」と気分が良いのです。

長い歴史の中で時間を乗り越えて来た古渡更紗…更に魅力的な古裂である事をそのつど再確認です!この帯は結城・紬のきもの、小紋、付下など幅広い着物にとても良く合い、満足!満足!です。