ぎをん齋藤
ぎをん齋藤

女将思い出語り

日本伝統の習い事…「道」

現在世の中の習い事は多様化し、日本伝統のもの以外に外国から伝わったものも増えて、最近の子どもたちは親に手を引かれて忙しく渡り歩く光景を目の当たりにします。

習い事は人間の感性や、精神力の幅を広げるので良い事だと私は以前から思っておりますが、その中で特に日本の伝統的な習い事は全てに「道(どう)」という一文字が加えられています。

外国の習い事のように、技や点数を競い合うのではなく、華道、茶道、武道等、日本独特の心と身体を一体とした精神的鍛錬による意味があり、例えば茶道なら床の花一輪を観た時、一行の軸を拝読する時折、又、剣道なら両手で竹刀を一振り頭上に掲げた時など、その瞬時に「自身の心」を問う瞬間でもある為に、生涯終りのない習い事となるのでしょう。

私の実父は剣道八段を極めた人ですが、生涯一人になっても木刀を振り続けたおかげで、精神的体幹は九十四歳で亡くなるまで健全でした。

私も茶道を家元でお稽古させていただき三十年を過ぎようとしておりますが、まだまだ生臭い自分自身に「ハッ」と気づく事があるから、ゆっくりと流れる時空の中でしっかり「自身の心」を見つめ直し続けたいと鍛錬に励みます。