ぎをん齋藤
ぎをん齋藤

女将思い出語り

落花枝に帰らず…然れども

この五月、三年振りに私の「謡い会」がコロナ前の日程に戻り、五月晴れの清々しい一日でした。演目は素謡い四十五分間の「屋島」でしたが、実にタイムリーにNHKの大河ドラマ「鎌倉どの…」も壇ノ浦シーンと重なりました。

この「落花枝に帰らず…云々」の文章は一般的に皆様の御存知の通り、数々の同意熟語がありますが、能の中での解釈は、一度死んでしまえば二度と生還はかなわず…と言う意味で、現世での犯した罪は業因となり、死後も苦しむ事となるが、しかし素直に万物のありのままの姿を受け入れたら浄土へ導かれるという、仏教的内容の物語です。

 

私がこの「屋島」を謡う事となり何とか作者(世阿弥)の心境を理解する為に読み返して学んだ事は、この世の人々との絆、縁を大切にそして優しく許す「心の広さ」を持つ心構えは、自分自身の人生の「要」であると言う事でした。

今回の舞台での私の着物は「屋島」に因んで弁慶格子の袋帯、着物は源氏雲に唐花をあしらった一式でした。演目に合わせての衣装選びも愉しいひとときでした。