ぎをん齋藤
ぎをん齋藤

ブログ


Warning: Invalid argument supplied for foreach() in /home/gion-saito/www/admin/wp-content/themes/gionsaito/index.php on line 122

陳列会と白夜と彼岸花

昨日賑々しく開幕致しました、ぎをん齋藤「第73回京都陳列会」ですが、本日もお天気に恵まれまして、朝から多くのお客様にお越しいただきました。今日は最終時間にご予約が無かったため、少し早めの店じまいです。

本日お越しいただいた中には、昨日から連続してご足労いただいた方や、何年かぶりで久しぶりにお会いする方もいらっしゃって、皆様のご近況を伺うのも愉しく、コロナ禍に苦しめられた2年間から、少し状況が前に進み始めたような感じが致しました。

いらっしゃった方々からは、「工事は無事に済みました?」「どこが変わったんですか?」など弊店の状況をいつも見守っていただけている事が感じられるお声掛けを頂戴したり、田中の体調をご心配いただいたり(お陰様でもう元気百倍です!)…何とも有難い、嬉しい気持ちにさせていただきました(^^)

もちろんお着物をご覧いただいたり、コーディネートやご着用についてのご相談を承るのが本分ではあるのですが、やはりその中にも人と人との温かい繋がりを感じられるのは、対面営業ならではの良さだなぁ…と、時代の流れに乗り遅れ(もしくは逆行し?)ているような業態ですが、今後もこのスタイルを守って行きたいと強く感じます。

さて、陳列会とは全く別の話ですが、昨日「10月1日(土)」は、京都市とアンスティチュ・フランセ関西(旧関西日仏学館)が主催する「ニュイ・ブランシュKYOTO」の開催日でした(ニュイ・ブランシュ=nuit blanche とは、フランス語で白夜のことです)。毎年10月の第一土曜日の夜に行われる現代アートのお祭りですが、今年は陳列会と重なって観に行けないな…と思っておりました。

ですが、田中の住まいは好都合な事に岡崎~白川エリアの、複数のインスタレーションが毎年展開される地域に近いものですから、帰り道にでも何か見られないかと、少し期待しながら昨日は帰路につきました。

…思った通り、ありました。

白川のど真ん中に突如出現したガラス張りの「茶室」。弊店も大変お世話になっている杉本博司さん作の「聞鳥庵」に、迫力や存在感、洗練度は及ばないものの、薄い壁を隔てて「内」と「外」の世界に境を作り、時間と空間に切れ目を生じさせたかの如く外界とは異なる時の流れを体験する…その茶の湯の営み、精神世界を「外」から丸見えになるよう拵え、鑑賞の対象と仕立てることによって、視覚的には「内」と「外」の断絶が緩和されたようでいてその実、両者の間に一層強固な隔たりを生じさせる…「見るもの」と「見られるもの」にそれぞれの役割を強く自覚させることによって、「茶室」という魔法空間の持つ非日常性を茶室の外にまで拡張する試み…であろうと田中は考えました。

こういうものがある人にとっては予告なしに突然、日常の通勤路に出現することの異様さというのは、私にはとても好ましいものに感じますが、人によっては驚きや拒否感にも繋がることだろうな…と思ったりします。

でも、万人に好まれるものなど存在しないし、もし存在するとしたら、それに人を感動させたり突き動かしたりする力は生み出せないと思います。こういう文脈は亡くなった先代も時折お話しされていたなぁ…と、一年前のことを昨日のことのように、思い出しながら、白川沿いに咲く彼岸花を眺めて帰った夜道でした。