ぎをん齋藤
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舞を観る

例年、残暑が厳しい京都市内も、このところは気温が落ち着いて、着実に秋が深まっていくのを感じます。

秋といえば「〇〇の秋」…というのがこの時期の常套句ですが、やはり私は「芸術の秋」について。
先週末に大阪の国立文楽劇場にて「東西名流舞踊鑑賞会」に行って参りました。

祇園・新門前の弊店のお向かいにお住まい兼お稽古場を構えていらっしゃる、京舞井上流のお家元、井上八千代先生のご出演とあって、今回は私が拝見に参りました。

私は日本舞踊には全く詳しくありませんが、東西名流の共演というだけあって、それぞれに趣の異なる舞台を見せていただき、2時間の公演でも飽きることなく(失礼!)鑑賞することが出来ました。その点、能楽は慣れるまで睡魔との闘いに負けてしまう事が多かったのを思い出します…ここだけの話ですが。。

パンフレットには土佐派の秋草に鶉図、季節を感じさせます。

さて、お家元の舞台は何度か拝見したことがあるのですが、軽やかな身のこなしと能楽師のようなキレのある振り付け、鍛え抜かれた体幹の強さ、はもちろんのこと(それだけでも十分に驚嘆に値します)、今回の演目「葵の上」では、六条御息所の苦悶を表す圧倒的な表現力に田中は心打たれました。

動きのある人物としては登場しない葵上を象徴する小袖が舞台中央に置かれていたり、花道のすっぽんを使った動きがあったり、道具類での演出も刺激的なものでしたが、何よりもそれを活かし切るお家元の表現力、両手の指の爪先まで、舞台上を激しく動きながらの一瞬の視線のやり方ひとつにまで細心の注意が払われており、文字通り全身全霊に至るまで役になり切っている…というより、舞台と一体化して一つの作品となっている、ことがひしひしと伝わって来ました。

印象的だったのが、六条御息所が宮中での華やかなりし生活を振り返り現在との落差を嘆く序盤部分と、恨みや妬みや様々な悩み苦しみが葵上への怒りに結集し瞋恚の炎に身を焦がす中盤部分と、横川の小聖の祈祷によって調伏され悪心が消え成仏(?)した最終盤の、それぞれの場面で、お家元の表情が全く別人のように見えたことです。

正しく国の宝、これからもお力の続く限り、その珠玉の芸術を披露していただきたいものです。まったく眼福のひと時を過ごさせていただきました。ありがたいことでした。

来月26日には、東京・半蔵門の国立劇場にご出演なさいます。ご興味のある方は、チケットも本日から予約販売が開始されましたので、ぜひチェックしてみて下さい。

田中は観に行く事ができるか分かりませんが、うまく東京出張と組み合わせられないか…などと思案中です(^^)/