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ぎをん齋藤スタッフによる、染めに関わるウンチク+京都な日々をお届けします。敷居の高い印象を持たれがちな弊店を、少しでも身近に感じて頂ければ幸いです。

秋の陳列会を控えて④

「桃山縫いです」と申し上げた場合、それはもうほぼイコール「渡し縫」のことです。

「桃山縫い」の一番の特徴は「色がわり」。

写実ではありえない、場面を区切る彩色の変化は、渡し縫という技法があればこその表現です。

桃山時代を特徴づけるおおらか且つ大胆な配色・構図取りは舞台映えなども意識してのことかと推察されます。

 

 

 

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✉:gionsaito-ohshiro@outlook.com

 

秋の陳列会を控えて③

刺繍用途の変遷に着目するのも面白いです。

飛鳥時代から室町時代にかけては、主に仏の世界を彩る技法として用いられてきました。

その間の平安時代には晴れの場の衣服、調度品などにも刺繍が使われた様子が紫式部日記などから伺えるそうです。

しかし、この時代の作例は現代にはほとんど遺っていないのが残念(;´Д`)

 

社会情勢を踏まえて少しずつ刺繍の使用範囲は広がっていきますが、

ひとつ大きな転機と言えそうなのは室町時代に舞楽や能の装束に刺繍が用いられるようになったこと。

国宝の「高野山天野舞童装束注文」には、舞楽装束を京都の縫物師に注文した際の履歴が詳細に記されており、

当時、技術の高い職人たちが京都に集まっていたことも窺い知ることができます。

その装束からは、これまで多用されてきた「刺し縫」が「渡し縫」へと移行していく様子も見て取れ、

芸能の衣装として、写実よりも意匠化を志向していることがわかります。

こういう歴史って面白いですよね~( *´艸`)

 

「渡し縫(ワタシヌイ)」

柄の端から端まで糸を渡し、裏面にまわる刺繍糸を極力少なくして面を縫う技法。

 

この「渡し縫」が最盛期を迎えるのは室町後の桃山時代。

激動の戦乱期は、同時に絢爛豪華な時代でもあった訳ですが、

刺繍の歴史においても、最も魅力的な作品が生み出された時代であったと思います。

 

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秋の陳列会を控えて②

刺繍と一口に言っても、当然ながら沢山の技法、縫い方があります。

先日記事の天寿国繍帳は、日本の刺繍の黎明期さながらに、すべて「返し縫」という非常にシンプルな縫い方で仕上げられているそうです。

続く奈良時代には、中国から伝わったであろう「鎖縫」や「相良縫」、「刺し縫」などの技法も登場し、

表現方法の使い分けが意識されるようになります。

 

「鎖縫(クサリヌイ)」

文字通り鎖状の縫い方。中国の漢から唐時代に多用されたが、日本では奈良時代の作品に集中。

 

「相良縫(サガラヌイ)」

布帛の表面に結び玉を作る縫い方。

 

 

「刺し縫(サシヌイ)」

針目の方向を一定にして、針足に長短をつけながら縫いつめて面を表す技法。

 

 

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