ぎをん齋藤
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齊藤康二

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京都東山の祇園一角に店を構えて170年余り、
呉服の専門店として自社で制作した独自の
染物・織物をこの弊店で販売しています。
ぎをん齋藤の日常からこだわりの”もの作り”まで、
弊社の魅力を余すことなくお伝えしていきます。
皆様からのお問い合わせ、ご質問などお待ちしております。
◆お問い合わせ
ぎをん齋藤 齊藤康二
TEL:075-561-1207
(Mail) gion.saitokoji0517@gmail.com

松源院

7月に入り強烈な猛暑の中、先日久しぶりに奈良は大宇陀にある大徳寺塔頭松源院 泉田玉堂老師を訪ねた。

失礼ながら随分と簡略するが、泉田玉堂老師は全国を歴訪し瑞泉僧堂で印可証明を受けた後、2012年大徳寺において

視篆開堂(してんかいどう)の儀式を行い大徳寺第五百三十世住持となった頂点を極めた高僧である。

そしてまた当時私が22、23歳、彼が松源院住職となったばかりの50過ぎの頃、1年間修業した経緯もあり

烏滸がましいが私にとっては第二の父といってよい存在でもある。

大徳寺の住持となられた今では、本来ならばそうやすやすとお会いできるものではない。

ご本人は至って自由自在、電話はあるがたまにしか出ず、連絡を取ろうにも中々うまくいかないのはわかっているので、

その日も私は何の連絡もせずに車で奈良まで走っていった。

さて、2時間ばかりの道中はあっというまで桜井から大宇陀に入ると景色は一変し、目の前には奈良特有の低い山々が

広がり、きつい山道を登っていくといよいよ松源院が見えてくる。

門柱には”毒語心経提唱”、または”拝観謝絶”と禅宗らしい気骨な文字が堂々と掲げられてあり、仏性とは何か!

容易にこの門をくぐってはならない!と言わんばかりの張り詰めた空気が肌に伝わってくる。

そこはたかが1年修行した身である私だが、大変失礼で無作法とわかりながらも堂々と大股で目の前の青竹をまたいで

入っていくと、分厚い戸を開け奥からいつものすばらしい笑顔で出迎えてくださるのである。

御歳80、体格は良く、眼光も鋭く、そこから放たれるオーラは光り輝き、二十歳の若者のように自由自在に動き回る

その活力はどこから来るのだろうと不思議でしょうがない、まるで本人だけ時間が止まっているかのようである。

その老師が問う、人は年老いていくものだが、では時間(とき)というものは元々あるのか、もしくはないのか、

答えてみよ!と。

 

 

 

 

 

 

美しき色、いにしへの裂

まだ記憶にある人も多いと思うが、以前2017年6月から8月の終わりまで、京都岡崎にある細見美術館にて

故齊藤貞一郎が蒐集した「古裂」の展覧会を約2か月の間行った。

当時本人の真意は、ブログにもあるように大変光栄なことだが、古裂の展覧会となると集客の反応も含め、

諸々心配事があると綴っており、またその目的は一生かけて蒐集した古裂を思い切って世間にさらし、

その染色の素晴らしさや技術の高さを肌で感じてもらい、それらを作り出した日本人の持つ美意識を再認識して

いただけたら幸いである、とも言っていた。

そして今年の7月、同じ細見美術館からのオファーで美しき色、いにしへの裂「ぎをん齋藤」と「染司よしおか」

の挑戦というタイトルでまた展覧することとなった、5年ぶりのことである。

今回の展覧会は、江戸時代より代々続く京都の染織家業を継ぎ、それぞれのスタイルで美を追求してきた二人の

美しい色彩や素材への「こだわり」、そして伝統技術の継承と、様々な思いを作品やコレクションと共にクローズアップして

お届けするという内容である。

そのお二人、生まれも育ちも京都のど真ん中、齊藤貞一郎は昭和23年、吉岡さんは昭和21年、ともに戦後の

高度経済成長期に生まれ、家業の染織という枠にとらわれず競争社会を勝ち抜いてきた共通点も面白いところである。

ぜひこの美しき色、いにしへの裂を観に行っていただきたい。

京都細見美術館 2022年7月2日(土)~8月28(日)

 

 

貴重な職人文化

この春からぎをん齋藤はようやくすべての催事を再開し、またエンジンに火を入れ直して再スタートである。

そのためもの作りに関しても各職方へ染め出す点数を少しづつ増やし、平時の状態に戻していかなければならない、

なぜならこのコロナ禍で職方も大きな損害を受け、存続さえ危うい職人も出てきているのが現状だからである。

また何より大きな問題は、職人の伝統技術は本人以外即戦力として代わりが効かない、そして後継者の育成にも相当の時間と

費用がかかり、志す人材も減少しているという実態がこの数十年の間に浮き彫りとなってきた。

とりわけ我々がお付き合いさせていただいている職人は専門分野にとどまらず、あらゆる分野で才能を発揮され

そのセンスと技術は唯一無二、繊細な仕事は彼らにしかできないほど貴重な存在なのである。

ここ数年、彼らに骨のある仕事を出せなかったことはしっかりと反省しなければならないと思っている。

御年65歳、金彩を専門とする傍らあらゆる材料を使いこなし芸術的な仕事をする

彼もエリート集団(職人)の一人、美術をこよなく愛し、20代の頃は一日9時間

毎日デッサンをしていた。

この摺箔の中の細かい描き絵にも注目していだたきたい、すばらしい仕事である。