ぎをん齋藤
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田中創造

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京都・祇園の老舗呉服店『ぎをん齋藤』で、営業・制作に携わっております。古典に学び現代に活きる、オリジナルきもの・帯の創作舞台裏をお届けします。
~お問合せ~
ぎをん齋藤 田中 創造(たなか そうぞう)
☎ 075-561-1207 または 090-8880-1894(直通)
✉ gionsaito-tanaka@outlook.com

【王朝祭祀の装い】展

週末、近所の「源鳳院」(山科伯爵邸)に行ってきました!

宮中祭祀に深く関わり、十二単の着付けなどを行う「衣紋道」山科流を継承されるお家柄でもあるため、その有職としての独自の視点や情報を一般にお伝えになる活動を盛んにされていらっしゃいます。

今回は「王朝祭祀の装い」と銘打たれた展示会に伺ったのですが、お目当ては「小忌衣(おみごろも)」と「五節舞装束」です!

ご興味の無い方には「なんじゃそら」というお話ですが、いずれも宮中祭祀、とりわけ天皇の代替わりに伴う大嘗祭などに深く関わる衣装でして、今回は大正四年に執り行われた「五節舞」の衣装、その実物が展示されるとの事で、これはまたとないチャンス!と思い駆け付けました。

源鳳院さんは、田中の住まいから徒歩10分~15分ほどのところにあり、ご近所なのですが、実はこれが初訪問です。きっかけを与えてくれたのは、日頃「ぎをん齋藤」でお世話になっている職人さんでした。

普段は摺疋田のお仕事をお願いしている職人Kさんなのですが(過去の大城ブログにもご紹介しています♪)、お仕事熱心で、且つ探求心が強く、気になる事はトコトン突き詰めるタイプのお人柄からか、時代考証や再現性が高い次元で求められる、古代衣装の復元などのお仕事がちょくちょく入って来るそうで、今回は上に掲載の「小忌衣」の復元を手掛けられた、という訳です。

実は復元作業は2年ほど前に完了し、その時に田中も完成品を拝見しているのですが、再度拝見して「おや?」と気になった事がございました。

 

「…柄が見えない(色が薄い…)?」

完成当初はもっと柄のグリーン(山藍の葉の汁を染料として利用)が色濃く出ていたように思ったのですが…。

 

ちょうど職人さんご本人が、直後に予定されていた特別講演の為に現地にいらっしゃっていたので、運よくお話を聞く事が出来ました!
(Kさん、お忙しいところ掴まえてしまい申し訳ありませんでしたm(__)m)

曰く、山藍の葉の汁は褪色が著しく(染料としては耐光堅牢度が低い、という事になりましょうか)、グリーンの青味が飛んでしまった結果、薄い黄土のような色だけが残り、柄が見えにくくなってしまっているんだとか。

また、山藍の葉ではなく、根を天日乾燥(紫外線に晒)し、すり潰して染料化し、かつ銅媒染を行うと堅牢度が高くなる…など、その後に判明した事も多々あるそうですが、古文献にそこまで詳細な資料が遺されておらず、現存する「小忌衣」も江戸時代まで継承されていたとされる技法とは異なり、近代的な素材を利用して作られているそうで、「お手本」の無い手探り状態の中から何とか復元にこぎつけたとの事で、以前工房に伺った際にこういうお仕事の難しさを教えていただいた記憶が甦りました。

会場には他にも古い装束や絵巻など、貴重な資料が多数展示されておりまして、現代にも粛々と受け継がれる王朝文化の典雅を垣間見ることが出来たように思います。

大正四年当時の「五節舞姫」のお写真も展示されておりました!床の市松模様が大正っぽいモダンな印象ですが、連綿と続く時の流れを感じさせてくれます。

 

余談ですが、能楽の詞章の中にも「五節舞」という言葉は頻繁に現れるのですが、お謡いのルールとして「ごせちのまい」とは読まず、「ごせ「ん」の~」と謡うことになっていますので、漢字を見ても「ごせんのまい」と脳内変換してしまうのは、能楽あるあるなのでしょうか(笑)

他にも「小忌衣(おみごろも)」「節会(せちえ)」「東遊(あずまあそび)」など、謡本の中で本当に良く目にする言葉が頻出する展示でしたので、田中的にはとても楽しい時間でした♪

改めて「羽衣」や「吉野天人」あたりの謡本を開いてみようと思います(^^)/

東京に参ります

11月に入りまして、肌寒く感じる日もありながら着物でお出かけするには良い気候が続く京都です。

来月8日~10日は、銀座「かねまつホール」にて陳列会を催す予定ですが、それに先がけて東京出張に参ります!

新春~年度末の入卒シーズンに向けて、春らしいお着物・帯をお持ちする予定です。
もちろん、ぎをん齋藤と言えば…の「御所解」「摺箔」など、一本あれば活躍する染帯もご覧いただけます。

「陳列会には行きたいけど予定が合わない…」
「ぎをん齋藤に興味があるけど、敷居が高くて暖簾をくぐれない…」

というご新規のお客様も、私が単独で参る出張には気軽にお越しいただけると思いますので、ぜひこの機会にお問い合せ下さいm(__)m

日程は11月25日(金)~26日(土) 銀座のホテルの一室を利用して、お一組ずつこだわりの品々をご覧いただく形式です。

お約束が重なってしまうとご希望に沿えない場合もございますが、東京には毎月のように誰かが出張に参りますので、まずは気軽にお問い合せ下さいますと幸いです。

よろしくお願い申し上げます。

 

ぎをん齋藤
田中創造(たなか そうぞう)
075-561-1207(店)
090-8880-1894(田中直通)
gionsaito-tanaka@outlook.com

舞を観る

例年、残暑が厳しい京都市内も、このところは気温が落ち着いて、着実に秋が深まっていくのを感じます。

秋といえば「〇〇の秋」…というのがこの時期の常套句ですが、やはり私は「芸術の秋」について。
先週末に大阪の国立文楽劇場にて「東西名流舞踊鑑賞会」に行って参りました。

祇園・新門前の弊店のお向かいにお住まい兼お稽古場を構えていらっしゃる、京舞井上流のお家元、井上八千代先生のご出演とあって、今回は私が拝見に参りました。

私は日本舞踊には全く詳しくありませんが、東西名流の共演というだけあって、それぞれに趣の異なる舞台を見せていただき、2時間の公演でも飽きることなく(失礼!)鑑賞することが出来ました。その点、能楽は慣れるまで睡魔との闘いに負けてしまう事が多かったのを思い出します…ここだけの話ですが。。

パンフレットには土佐派の秋草に鶉図、季節を感じさせます。

さて、お家元の舞台は何度か拝見したことがあるのですが、軽やかな身のこなしと能楽師のようなキレのある振り付け、鍛え抜かれた体幹の強さ、はもちろんのこと(それだけでも十分に驚嘆に値します)、今回の演目「葵の上」では、六条御息所の苦悶を表す圧倒的な表現力に田中は心打たれました。

動きのある人物としては登場しない葵上を象徴する小袖が舞台中央に置かれていたり、花道のすっぽんを使った動きがあったり、道具類での演出も刺激的なものでしたが、何よりもそれを活かし切るお家元の表現力、両手の指の爪先まで、舞台上を激しく動きながらの一瞬の視線のやり方ひとつにまで細心の注意が払われており、文字通り全身全霊に至るまで役になり切っている…というより、舞台と一体化して一つの作品となっている、ことがひしひしと伝わって来ました。

印象的だったのが、六条御息所が宮中での華やかなりし生活を振り返り現在との落差を嘆く序盤部分と、恨みや妬みや様々な悩み苦しみが葵上への怒りに結集し瞋恚の炎に身を焦がす中盤部分と、横川の小聖の祈祷によって調伏され悪心が消え成仏(?)した最終盤の、それぞれの場面で、お家元の表情が全く別人のように見えたことです。

正しく国の宝、これからもお力の続く限り、その珠玉の芸術を披露していただきたいものです。まったく眼福のひと時を過ごさせていただきました。ありがたいことでした。

来月26日には、東京・半蔵門の国立劇場にご出演なさいます。ご興味のある方は、チケットも本日から予約販売が開始されましたので、ぜひチェックしてみて下さい。

田中は観に行く事ができるか分かりませんが、うまく東京出張と組み合わせられないか…などと思案中です(^^)/