ぎをん齋藤
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古裂よもやま話

裂でも完品(完璧な形で残っている品)からゴミのように小さいものまで、状態と景色(構図)、時代によって値段は乗数的に変わる。例えば辛うじて模様がわかる程度の辻が花なら数千円、A3サイズ程度になると数百万円、完品だと1億円というのが相場であろう。

先般も慶長小袖(江戸初期)を1億円で売るという話を聞いたが、下手すれば「ボロ布」としてゴミ箱に捨てられてしまいそうな裂が数百万の価値があるのだから「値段って一体何だろう?」と改めて考えてしまう。

単純に言えば需要と供給のバランス、経済原論の示すとおり欲しい人が多くて供給する人が少なければ値段は上がる。今流行りのオークションも会場で競り合い、我を忘れて高値で落札すれば売手の思う壺となる。古美術商の世界では過度な高値になり過ぎないように、最高額でくじ引きをすると聞いた事がある。

そう言えば、本阿弥光悦が茶道具屋で見つけた茶入を手に入れるために全財産と交換したと母に伝えると、母は「でかした!」と褒める一節を思い出す、江戸初期にも光悦のように無類の道具好きが既に存在したのだ。