ぎをん齋藤
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唐代裂への挑戦

私の布の歴史をたどる旅も7世紀の「唐」時代へと遡り、いよいよ終着点が見えてきた。

 

唐は玄宗皇帝や楊貴妃などビッグネームが登場する華やかな時代であった。シルクロードを三蔵法師が踏破し、天竺(インド)から仏教の経典を持ち帰り、中国に一大仏教ブームを巻き起こした。この流れから日本も時の権力者、聖徳太子の力によって日本に仏教を定着させることとなる。

染織的にも唐はシルクロードを経てペルシャの影響を受けながら織物を大成し、経錦(たてにしき)しか無かった時代から緯錦(よこにしき)を完成させ、多色の織物を大量に織り上げる技術を確立した時代でもあった。

この歴史が現在の西陣織の源流となって私は生活の糧を得ているのである。こう考えていくと、一般的な教養としての知識ではなく多くの社員を巻き込んで営んでいる会社の底辺であり、それを踏まえずに前には進めないのである。

現在制作中の唐代裂は、生憎ながら入手したものではなく「新疆ウイグル自治区博物館」に収蔵されている品で、しかも経錦(たてにしき)の織物である。この時代まで古いものを一般人が入手することはほぼ不可能で、ロンドン辺りの古美術商では時々売り物が出るらしいが手の出せる金額では無い。また経錦(たてにしき)で復元するのもほぼ不可能な代物である。