ぎをん齋藤
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大好評「摺箔」シリーズ

少し前になるが、黄金色が時代の主流になるとブログに書いてから「摺箔」の染物に着手し始めたのだが、現在、作るものがハジから売れるほどの好評ぶりに自分でも驚いている。

この「摺箔」をやってみようと決めたのは、私のコレクションに一枚のサンプルがあったのが理由である。その裂は10年ほど前に入手したのだが、眺めてみても良さが理解できず「買い損ねた」と後悔した一点であった。

 

時代は桃山時代の作だが肝心の辻ヶ花染めが不出来で、絞りと絞りの間に摺箔が施されていたが、感心しない作品と評価した。摺箔の金箔は当然、純金を使用しているので申し分はないが、線描きがいかにも稚拙で、これは技術の劣る職人に無理やりやらせたものだと思い、長い間、壁に掛けっぱなしにしておいた。

それがある時から妙に気になる存在になってきた。さらに眺め続けると、なんとも言えない桃山時代独特のおおらかでゴージャスな名作だと気付いたのである。

 

それ以来、試作に試作を重ね、昨年の師走展に2点出品したところ完売したので、六月展では3点出品したが完売。自分でも自信が付いてきたので現在、「これぞ摺箔」という豪華な作品3点に着手している。この桃山摺箔の良さを知る人は少ないと思う。なぜなら遺例が非常に少なく、私が調べたところでも10点余りしか確認することができなかった。

 

桃山時代の匠達も、常に新味をもとめて、試行錯誤を繰り返したのだと思うと他人ごとではなく、親しみを肌で感じるのである。