ぎをん齋藤
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廓(くるわ)とぎをん齋藤

ぎをん齋藤のことをよく知らない人から「おたくは祇園の芸妓、舞妓のきものを専門に作っている店ですか?」と尋ねられることがある。

確かに先代の頃は廓のお客様が多かったと記憶している。初代の上京区から祇園に移転してきたのもその筋の顧客を獲得する為だったかもしれない。

現在店のある新門前通は京舞「井上八千代」氏のお膝元、先代家元のころから舞の衣裳などのご下命を頂いていたのも事実、そのご縁で祇園甲部のお客様が増えたのであろうと推測する。

私が7代目を継いだ頃は廓好みのきものを積極的に作り出し地域に密着した経営を目指した。しかし古裂を研究していくうちに、自分が本当に作りたいのは江戸後期の美ではなく、桃山時代の小袖や同時代にインドに注文して作らせた更紗など16世紀の美に惹かれるようになった。

その頃からぎをん齋藤のテイストは変わっていったと自認する。消費者のニーズに合わせて物を作るのは商売上常識かもしれないが、人間、歳を重ねると「ワガママ」が優先しまうのか自分の本質が露呈するのか、気の向くものしか作れなくなる。

徐々に廓とは離れつつあるのも致し方ないと思っている。