ぎをん齋藤
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桃山時代にもあった上手と下手

私のコレクションの中にも「辻ヶ花」の上手と下手があることに気づいた。

画像① 「檜垣に藤菊文辻ヶ花染(桃山:16世紀)」

 

画像② 「扇面散らし文辻ヶ花染(桃山:16世紀)」

 

 

画像①は絞りがビッシリと密に施され隣り合う模様との境は狭く、絞りの輪郭が明瞭だが、②は模様が散漫で絞りの輪郭が甘い。

 

決定的な両者の違いはカチン(墨)で描かれた仕上げの線である。①は精緻でしかも何の躊躇もない線が力強く引かれているが②は線が稚拙で粗雑だ。

 

当時は身にまとう人の身分差があって上手物は上層階級へ、下手は庶民クラスへと目利きが選別していた。だが今の時代、この玉石が入り混じって市場に出回るから消費者自身が峻別する眼を持たないと下手物を高い値段で買う羽目になる。

 

とにかく先入観、肩書きを捨て無心に多くのものを観る以外に上達の方法はないのだが、よくできた偽物や本物なら中古品でも良いという消費者心理が寛容な昨今は選択肢が広がるだけにかえって難しい。