ぎをん齋藤
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絵の具と染料

前述の絵の具の問題解決はなかなか難しそうだ。きものの特徴は絹の手触りの滑らかさであるから、その特徴を殺してまで彩色や塗布するのは本末転倒だと思っている。

 

明治時代以前は全ての色が草木の染料を用い、幕末近くに西洋から化学染料が輸入され始め、草木染めは徐々に姿を消していった経緯がある。草木染めの欠点は希望した色を合わせる難しさ、草木染料の高価格、染める職人の手間がかかるなど現実性は薄い。現在は石油から作られる「酸性染料」が主流だが、ピンクやブルーなどの薄色は色ヤケが速いという難点もある。

 

 

現代のきもの選びは地色の良し悪しによって決まることが多く、江戸時代以前は地色を染める草木染料の色数はごく限られていたのでパステルカラーなどは珍しい。昔は色よりも描かれた「絵」の良し悪しが評価基準であったと思われる。

 

それは筆で文字や絵を描くのが普段の生活であったため、森羅万象を筆で描ける職人が大勢いたので絵の優劣を競うのが当たり前のように行われていたに違いない。現在のように日本画を生地に描ける職人は数少なく、絵ではなく単なる図形となってしまった。

 

かくてきものは、その特意な形態はそのままにしつつ選ばれる基準は洋服と同様に「地色」中心となったのである。洋服の場合は「形」にバリエーションが多いので選択肢は多いが、きものは形が同じだから色と値段で選ぶしかない。