ぎをん齋藤
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隠れた古裂コレクター

先日ある古裂を専門に扱う美術商と話をしていた中で親子三代に渡って古裂を蒐集し、しかも誰にも見せずに密かに楽しんでいる人が京都に居ると聞かされた。

 

さすが京都、千年の都だけのことはある、誰も見たこともない古裂を蒐めては飾り、それを眺めながら美味しい酒を飲むとは、なんと風流な人がいるものだと、つくづく感激したしだいである。

 

 

茶道具を集めている人を大勢知っている。あの収集は殆ど茶道を嗜む人で、蒐めた道具はすぐに使えるという、わかりやすい趣味である。洋画や日本画、工芸品を蒐める人達は、その作者に傾倒している人が多く、これも比較的分かりやすい。

 

しかし古裂を蒐めるのは作者は不詳、製作年代は不明なものが多い上に、まともな形で残っているものも少ない。私のように、それらを仕事に活用する人間は理解しやすいが、仕事にも関係なく自慢するのでもなく、密かに古裂を蒐める親子三代は趣味人として立派、これこそ本物の道楽である。

 

勿論、その美術商から趣味人の名前や住まいなどの情報は教えてもらえないことは承知しているので尋ねなかったが、同好の士として心が豊かになる思いがした。