先代の教え / 

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筆 : ぎをん 齋藤

以前と違って染物の出来上がりに時間がかかる、その一つの理由が「蒸し」での停滞である。

「蒸し」とは化学染料を生地に定着させる為に蒸気で生地を蒸す作業である。

石油のボイラーで高圧の蒸気を生地吹きかけるのだが、商品が数集まらないと燃料のコストがカバーできない。

したがって数が集まるまで「蒸し」屋は就業しない。

昨今の着物離れから染め出す数が減ると「蒸し」で停滞してしまう。更に最近の祭日、休日の増加傾向が一層停滞を助長する。

「蒸し」の業者で話し合って合併するなり休業日を変えるなりして問題解決を図るべきだと思うが一向に改まらない。

「蒸し」屋は水元(水洗い)と「水洗」(揮発で防染ゴムを洗い流す)作業を兼務するから停滞すると、余計に問題が深刻になる。

現状を鑑みると業界の生き残りを視野に入れながら、より良いものを早く出来るよう知恵を絞るべきだ。私がもう10年若ければ何らかの解決策を求めて走り回るところだが、今の私には不可能である。

筆 : ぎをん 齋藤