ぎをん齋藤
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大城大

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ぎをん齋藤スタッフによる、染めに関わるウンチク+京都な日々をお届けします。敷居の高い印象を持たれがちな弊店を、少しでも身近に感じて頂ければ幸いです。

秋の陳列会を控えて③

刺繍用途の変遷に着目するのも面白いです。

飛鳥時代から室町時代にかけては、主に仏の世界を彩る技法として用いられてきました。

その間の平安時代には晴れの場の衣服、調度品などにも刺繍が使われた様子が紫式部日記などから伺えるそうです。

しかし、この時代の作例は現代にはほとんど遺っていないのが残念(;´Д`)

 

社会情勢を踏まえて少しずつ刺繍の使用範囲は広がっていきますが、

ひとつ大きな転機と言えそうなのは室町時代に舞楽や能の装束に刺繍が用いられるようになったこと。

国宝の「高野山天野舞童装束注文」には、舞楽装束を京都の縫物師に注文した際の履歴が詳細に記されており、

当時、技術の高い職人たちが京都に集まっていたことも窺い知ることができます。

その装束からは、これまで多用されてきた「刺し縫」が「渡し縫」へと移行していく様子も見て取れ、

芸能の衣装として、写実よりも意匠化を志向していることがわかります。

こういう歴史って面白いですよね~( *´艸`)

 

「渡し縫(ワタシヌイ)」

柄の端から端まで糸を渡し、裏面にまわる刺繍糸を極力少なくして面を縫う技法。

 

この「渡し縫」が最盛期を迎えるのは室町後の桃山時代。

激動の戦乱期は、同時に絢爛豪華な時代でもあった訳ですが、

刺繍の歴史においても、最も魅力的な作品が生み出された時代であったと思います。

 

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