摺疋田
さてさて前回記事の続きです。
摺疋田を掘り下げていきたいと思います。
まず、型で刷り出す、と申し上げると、版画のようにサクッと一発で印刷されるイメージを抱きがちですが、
実は型で疋田を描くために、型置職人Kさんは4枚の型を用いていらっしゃいます。
下画像がその四枚です。
型を見るだけでは、これが「疋田鹿の子」になるとはパッと見てわかりませんよね。
板に反物を貼り、この型紙を固定し、丸刷毛で染料を刷る。
型紙自体が伸縮もするので、片手に丸刷毛、もう片方の手ではこの型紙を作業中に何度もめくって
ズレが生じていないか確認・調整しながら作業は進みます。
一枚目を終えたら、二枚目に取り換え、それが終われば三枚目…四枚目…
これが反物一反分ですと13mほどになりますから、絞り程ではないにしろ、やっぱり大変なんです。
この4枚という型の枚数にもKさんのこだわりが潜んでいます。
上記の型画像、よくよくご覧いただきましたら、3枚目を重ねた段階で鹿の子柄は完成することにお気付きになられましたでしょうか。
この3枚目の十字部分は1枚目、2枚目で刷り出された部位に重なりまして、敢えて染めの「ムラ」を表現することに一役買っています。
摺疋田でも疋田絞りのような陰影、奥行き等々を演出するためのひと手間です。
そして更なるひと手間が4枚目。
一層の奥行き、揺らぎを狙います。不作為の作為、という感じですね。
整然と並んだ丸刷毛に、Kさんの几帳面さと、お仕事に対するプライドを大城は感じました(。-`ω-)
この丸刷毛は蝦夷鹿の毛で作られるそうです。(奈良じゃなくて蝦夷なのか…)
ここでもまた鹿。
え、だから「鹿の子(カノコ)」か!?とちょっとした深読みも個人的には面白く。
江戸時代から蝦夷鹿の刷毛なの?とか、新たなクエスチョンも大城の中に湧いております。
Kさん、また色々と教えてくださいね(*´ω`*)
ぎをん齋藤 大城
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