久しぶりに美しい裂を手に入れた。「苺手」と呼ばれる江戸初期に渡来した古渡サラサである。
生地は当然、木綿だが質が別格に良い。絹かと思うほどのしなやかさはインドのコロマンデル辺りに日本から注文したと思われる。
サラサでも日本に輸出された木綿は東南アジアやインド国内向けに作られたものと比べると細い木綿と打ち込みのしっかりしたものが使用されている。デリケートな違いを大切にする日本人らしい注文と言える。
本品は茶道の袱紗に仕立てられ千家十職「土田友湖」の箱書が添えられている。藍地に深紅で染められた紋様は丁寧な仕事が施され、以前に見たどの苺手よりも精緻さが際立っている。
黒楽茶碗をこの袱紗に包んで濃茶一服いただけば色の組み合わせを想像しただけで素晴らしい美の世界が現出する。