作品の評価において「力作」という表現をするところから作品には力のこもった、手のかかったものを良しとする風潮がある。それは作者の作品中で傑出した作品という意味であって、鑑賞者からすれば「それ程のものではない」と評価される事もあろうかと思う。
以前、私は自分にとって「心地良いか」が評価の基準と述べてきたが、視点を変えて「力」があるかどうかで再評価してみると、評価が違ってくることに気付く。
例えば「伊藤若冲」の作品よりも「尾形光琳」の作品の方が心地良いと書いた。確かに個人的な好みは「琳派」の作品は自分にピッタリとくるのだが「力」という点から評価すると若冲の方が一部の作品は優っていると認めざるを得ない。
同じ視点から「日本画」と「油絵」を比べてみると画材や画法の違いはあっても明らかに油絵に軍配を上げる。これに気付いたのは、最近、社員に積極的に染物を作らせてみて、彼らの作ったものには「力」が無いと見たからだ。彼らに「能力が無い」ということではなく「力」を表現する自信がないのだろうと想像する。
自分の満足いくものができて、それをお客様が高額でも納得して、喜んで買って下さる、この繰り返しが自信に繋がり、更に高みに向かって挑戦する原動力になるのである。まさに運動選手が筋トレを重ね、徐々に記録を残していく成長と同じで、一朝一夕にはなし得ない。