先日、ようやく「御所解復刻版」の地色が染め上がり、これから墨入れ、摺疋田、刺繍に取り掛かる。
これまでの作業工程は約50年前の御所解文様の輪郭から細部まですべてを正確に紙に写し取り、
その魅力を生地(縮緬)に最大限復活させることに集中してきた。
結果、地色が染まっただけの状態でも素晴らしい出来栄えとなり、そして先々代の匂いが漂う古き良き
祇園の御所解という風格がそのまま復活したことにもとても満足している。
この地色が染まり全体の輪郭が浮き彫りとなった状態を我々は”白抜き”と言っているが、ここがまさに大事な部分、
人間でいう骨格に値し、この基礎の部分が良くないといくら肉や筋肉を付けたとしても最終的に上手くいかない、
ということは今までの知識と経験から学んでいるのでそれは直感で判断できる。
ここまで約70%の完成ということだろうか、このあとも全てにおいて慎重に進めていくつもりである。
さて、なぜこのタイミングでそれを復活させるのか、そこのところを一部説明しておきたい。
最大の理由は先代から引き継ぎ、改めて御所解のルーツを見直していたことがきっかけである。
それは先々代の時代、”双葉会”という会名で展示会を開催していた時の写真の
一枚に堂々とその当時の御所解染帯が飾られていたのを見つけた。
それはどことなく懐かしさがあり、すべての文様が今より細かく集約され、
繊細に構成された当時「齊藤染物店」の御所解文様であった。
華やかさがあり、大らかで細密、草花が咲き乱れ御所解本来の形といって良いその姿、
ようやく4月に桜と共にお披露目となる。