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筆 : 齋藤 康二

個人的な魅力シリーズ【摺箔】

 

摺箔とは印金(金箔を粘着性のあるのりで貼り付ける装飾)の一つ、

技術のネームである。摺箔(すりはく)、なんとも言えない、

優雅で品のあるネーミングですね。

印金の技術は中国から飛鳥、奈良時代に伝来したと言われており、

この印金の技法は主に装束などに用いられ、鎌倉、室町時代では能装束や衣装の

装飾技法の中核として広く使われ、その技術も革新的に飛躍していった。

特に室町、安土桃山時代になるとそれまでの仏教文化は衰退し、【桃山文化】が現れ、

いわゆる豪華絢爛、あらゆる分野の美が花開くこととなった。

時を同じくして、ヨーロッパでもルネッサンス期となり、宗教と絡めた

美術、芸術、装飾や建築などありとあらゆる美が開花することになる。

摺箔とはそのような時代背景を元に、文化の進歩、開花の結晶として染織分野

に幅広く用いられ、その美しさに多くの上流階級が魅了されたのである。

これはぎをん齋藤の塩瀬摺箔染名古屋帯、である。

この摺箔シリーズに使われるモチーフは、すべて桃山文化で使われていた柄を

そのまま踏襲し、摺箔の魅力を余すことなく表現した、これぞ【桃山の摺箔】

と言っても過言ではないほど、精密に再現、再生している。

特に我々は割、わりと呼んでいる技法、金銀箔の中に表現している細かい草花の

線描写は当時のように職人が筆を使い、丁寧に描きこんでいくのが特徴であり、

桃山の摺箔を再生する上で欠かせない技術なのである。

そしてこの摺箔シリーズで次に重要な役割、ポイントとなるのが地色。

ご覧の通り、地色に対して柄は金と銀の摺箔のみ、という大胆な構成で

仕上がっている。また金銀の箔は地色によって発色が変化するので、

地色を決めるにはかなり難しい色彩バランスが要求される作品なのである。

人を魅了する作品を生み出すには、絶妙な色彩感覚、バランス、そして想像力が

必要で、それらを上手く組み合わせることによって唯一無二なもの作りができるのである。

 

 

 

 

 

 

筆 : 齋藤 康二