ぎをん齋藤の”もの作り”において、すべての技術、技法は決して欠かすことの
できない貴重な文化財産というべきものです。
今回はその中でも主役級、立役者的な存在、”刺繍”についてのご紹介。
我々のもの作りにおいて絞り、友禅、金彩、など着物を彩る技法はたくさんあるが
それらすべての工程を終えて、最後に登場するのが”刺繍”、通称 ”縫い”です。
それは最後の要、一番大事なポイントに刺繍を施すことで柄全体に
重み、力を与え着物自体の格を上げる効果につながる。
言い換えると最後のひと手間、スパイスのような役割でもある。
何より、着物全体が刺繍によって一層豪華絢爛に変身するまさに立役者。
これなしでは着物は語れないといっても過言ではありません。
これは慶長の貝を刺繍している写真ですが、菊、唐草、貝の輪郭といった
多種多様な柄をその柄行きに合った技法で刺繍している様子。
例えば、菊は割り縫い、唐草はまつい縫い、貝の輪郭は金駒縫いなど
その特徴を活かした技法を使うことで、刺繍の持っている魅力が柄と相まって
より効果的に表現され、技法、色目、柄などすべてが調和していくのである。
こちらは松の唐草文ですが、技法は菅縫いの一種、
生地の緯糸に沿って刺繍糸を渡していき、松の”くし”を金糸で
綴じていくことで、柄が完成する刺繍。
渡し縫いともいうが、桃山の刺繍にも使われている技法である。
このように、一見同じような刺繍に見えるが中身を紐解いていくと
いろいろな技法や糸の使い方があり、それらを体得した伝統工芸士、職人が
手間暇惜しまず針を刺していくからこそ、すばらしい作品が生まれるのである。