ぎをん齋藤の物づくりにはこだわりがある。
生地に色を付ける単純な在庫の積み増し作業ではなく、
ありきたりの言い回しになるが、染物一つ一つ綿密に染め出しをおこなっている。
生地の選択から始まり、図案の構成、友禅による色彩構成や刺繍の配色など、
様々な工程を経て、”ぎをん齋藤らしい”染物、きものや帯を制作しご紹介している。
(雲井クリーム地桃山縫い草花文訪問着)
例えば、きものには必ず友禅や刺繍を施していくのだが、無数にある色数から
こだわりの一色を選び出すのは並大抵のことではなく、簡単に決めきれるものではない。
納得いくまで吟味し、やり直しながら彩色し装飾を施していく。
言い換えれば、砂漠の中から原石を見つけるようなもので、探せば探すほど
難しくなり迷いが出てくる。
そこで何を学ぶかというと、自身の眼と美的感覚を養うことである。
美術品や古裂など、時代と共に贅沢な美を追求してきた作品を数多く見て、
目に見える美しさだけでなく、中身を学び理解する。
そうやって”いいもの”を眼の肥やしとして蓄積していくことで、本物がわかってくる。
着物:すずかぜ白地しけ引き螺旋撚り糸縫い夏付下
帯:苧麻(からむし)茶地蕪に茄子胡瓜夏染帯
その本物がわかる眼で物を見ないと、ものに隠された美を見つけることは
できないと断言できる。
言うなれば、似たようなものは作れても本物にはかなわないということだろうか。
こだわりとは本物を理解したうえで成り立つものであり、
ごまかしの効かないとても繊細なエッセンスといえる。