先日、広島は上田宗箇流を訪ねた。
広島駅から山陽本線に乗り約10分、西広島駅で降りたらタクシーですぐの場所に
小高い丘があり、右手に入ると簡素だが立派な門構えが見えてくる。
その門前には打ち水がしてあり、隅々まで手入れが行き届いたその先に足を踏み入れると
何とも言えない緊張感と空気に包まれ、深く呼吸をしてから玄関を開けるのがいつもの通りである。
上田宗箇流といえばご存じのように武家茶道である。
作法から点前まですべてが独特でその端々には武士の凛とした心得が見て取れるような動作もあり
桃山の武将の茶、躍動感そのものが魅力の茶道である。
さて、約400年続く当代は16代当主上田宗冏(そうけい)宗匠。
広島生まれの慶応ボーイ、そして何より博学多才である。
無論小生のような小者がこの方の経歴など綴ること自体が甚だ烏滸がましいので
やめておくが、初めてゆっくりとお会いした時の印象はなんと上品な方!というのが本音、
見た目からも涼しげな夏物のお召し物をゆったりと纏い、それにまた上品なクリーム地の
角帯を締めて、にっこりと微笑みながら語られるお姿は今でも忘れないほどである。
抹茶を頂きながらその深い造詣に触れ多岐にわたり話も弾むと、自然と私もどこか緊張がほぐれて
ついつい先走ってしまうこともあるが、いつも心地よい時を過ごさせて頂いている。
あの玄関先でにっこりと微笑みながら見送ってくださる宗匠、
またお会いできる日を楽しみにしております。
現在、京都国立博物館では”特別展京に生きる文化”と題して「茶の湯」が始まっています!