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筆 : 齋藤 康二

先般、本阿弥光悦から琳派の流れに沿って実物を数点拝見できる機会に恵まれた。

なかなかお目にかかれるものではない貴重なそれらをガラス越しではなく、

手が届くような近さで隅々まで観察できる機会に恵まれたことはとても幸運である。

桃山後期、光悦の書から宗達の水墨画、江戸中期、光琳のモダニズムな画風など

床の間に凛と掛けてあるそれらを目の当たりにするとその迫力に圧倒され

思わず息をのんでしまう。

常日頃、図録で何気なく見ていた作品だが実物に勝るものはなく、そこに表現してある

当時最先端であった筆のタッチや色彩構成、また光や環境によって自然と劣化した

何とも言えない画の風合いなどはまさに歴史であり、古美術と言われる所以がよくわかる。

一方、我々が制作する染織品もそれら古美術をモチーフに構成し色付けしていくのだが、

単純に見様見真似でやれるものではないし、できるものでもないことも痛感する。

ずいぶん前になるが私はフィレンツェで美術染織品(ルネサンス期)の修復をしていた。

そこで学んだのは、年月が経ち傷つき破損した美術品を修復していく上で

最も大切なことはその物の状態をしっかりと理解し、できるだけ元の形に戻すことにある。

言い換えればそれに携わる人間が個人の見解で修復をすすめてはいけないということで、

それはまた偉大な作者、作品に対する敬意にもつながる。

同じくぎをん齋藤のもの作りにおいても単にモチーフとして軽く扱うのではなく、

その美術品に敬意を表し、忠実に再現していくことを徹底している。

次の課題に対しても本物を観察し理解を深め、その物から得られる美を追求していきたい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

筆 : 齋藤 康二