今手掛けてる「摺箔」の起源を探りたいと色々美術書や専門誌に目を通しているが、
16世紀以前のものを見かけることなかったのだが「平家納経」を詳しく見ていたところ、
一巻の経典の見返り部分に金銀箔の絵を見つけた。
「平家納経」ははっきりと年代が特定された貴重な研究資料である。
平安時代末期、「平清盛」が1164年に厳島神社に奉納した経典30数巻である。
江戸時代初期に破損が酷かったので一部の表紙や見返りをやり変えたのは事実で、
当時の高名な絵師「俵屋宗達」がその大任を果たしたのも知られている。
平安時代から無傷の一巻の見返りが下記の画像であるが、
よく観ると花入れに生けられた蓮と共に銀箔を施して墨で仕上げの花弁と蕊が描かれている。
これが「空摺」という技法を用いたと解説がなされているが紙の下に型を置き、
上から硬い物で銀を擦り込み模様を浮き出させるという技法を用いた上に、さらに墨で仕上げをしたらしい、
これも矢張り摺箔の一種であろうか?
もしこの時代から連綿と桃山時代まで技法として受け継がれていたとしたら。これは大きな発見である。
「平家納経」といえども荒廃した時代には散逸したらしく、個人で一巻所有している人がいるという。
今でもお持ちなら、まさに家宝に相応しい。
1000年という時間は歴史の変遷からすれば恐ろしく長い時間である。
平安時代の華麗な工芸品、平家納経には私が今、試みている「摺箔」は見かけられなかったが、
木型を下に置いて銀箔を擦り付ける「空摺」が確認されたことは大切であり現代に生かしていけるかは我々現代人次第である。