「友禅染」の特徴は、防染糊(色が入り込まないように糊で模様の縁を防染する)にあるのだが、最近、独自に研究しているのが「濡れ描き」である。
書いて字のごとく、絵の輪郭が濡れたように柔らかいのが特徴である。なぜこんな事に拘るかといえば、「友禅染」で描く花や葉の輪郭は固く、写生で自然を写した草花の輪郭は、その友禅のようにシャープではないと気が付いたからである。もっとも江戸時代は、今ように固い防染糊を使用していなかったので、問題はなかったようでもある。
地色が染まっていない生地白に「濡れ描き」をする画法は「描き絵」と呼ばれ、昔からごく一般的に行われ、特に有名なもので、「光琳」が冬木家に残した「冬木小袖」は、国宝に指定されている。しかし、濃い色に地色が染まっているにもかかわらず「濡れ描き」をするには、ちょっとした秘密と熟練した技術が必要なのである。
今、まだ試作中だから細かな説明は省略するが、成功すれば、大自然に咲き乱れる草花がしっとりと朝露を含んだような、瑞々しい表現が可能となり、きものの新しい表現方法として、皆さんに新鮮な感動を与えられるのでは、と期待している。