我家の2坪の坪庭にようやく苔が入った。苔の上に鎮座する観音様も、これで座り心地が良くなったように見える。
どんな小さな場所にも美の空間を求める心は、京町家に坪庭を設える京都人の美学である。
ぎをんの店の坪庭は、5坪ほどの土地に手水鉢と鎌倉時代の灯籠と松、紅葉を植えた庭で、この間取りは江戸時代以来変えていない。住むための利便性を犠牲にしても、無駄とも思える坪庭を設えるのは「市中の山居」(=繁華な場所に田舎家を建てるのが茶道の心)をイメージすると同時に、心の余裕を示すものだと思っている。
そういえば店の北東の角、いわゆる「鬼門」に当たる場所も2坪ほどの空間を意識的にとっている。家相に悪いと聞かされていて、毎日、「裏鬼門」に当たる南西角の二ヶ所は酒と塩で清めるのが私の日課である。
このような風習は日本だけのことだろうか?よくは知らないが、お陰で家内安全、病気平癒の人生を送っている。