店主日誌 / 

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筆 : 齋藤 康二

戦後、昭和20年頃から始めた京都の陳列会も今年で73回目を迎える。

私の記憶にある古い思い出はまだ小学生の頃、会名は「双葉会」といい、秋冬の繁忙期を見越して

夏の終わりの残暑厳しい9月に行われていた。

当時は祖父母も含めた家族経営であったため、商店には主人とその血縁関係の

人間が表で働き、あとはいわゆる年季奉公の丁稚(でっち)が一人、外をカブで走り回っていた。

そのため陳列会となると家族総出で店の会場作りに駆り出され、子供の私も撞木や重い反物を

汗だくになりながらせっせと運んだのを今でも思い出す。

あの当時は今のように労働時間に何の制約もなかったので、みんな夜遅くまで頑張っていたものである。

そんな慌ただしい二日、三日の会であったが最終日の夕方、全ての片付けが終わると

応援に駆けつけてくれた同業の方々と一緒に近くの銭湯へ行って汗を流し、

それから店先でちょっとした慰労会を開くのが楽しみであり、恒例となっていた。

御膳の上には日ごろは食卓にでないような豪勢な食事や酒が花を飾り、疲れを癒して労をねぎらう

その雰囲気はとても心地良く、子供ながらにその楽しさを味わっていたのが懐かしく感じる。

さて、今回の陳列会は73年目というぎをん齋藤の長い歴史の続きである。

これまで様々な出来事や経験、そして長い時間を経て今のぎをん齋藤があると自負しています。

第1回目と同じ場所、同じやり方で今回も皆様をお待ちしています。

どうぞ楽しみにいらしてください。

銘:朱地松皮菱辻が花染名古屋帯

 

 

 

 

筆 : 齋藤 康二