今朝の日経にこんな記事があった。
「一気に描く、できるだけ一気に。彼がそんな風に描いているのを見れるのは何という喜びだろう。」
とこう書いたのはあの”フィンセント・ファン・ゴッホ”(1853~1890)である、と。
これは17世紀、レンブラントと同じくして1600年代を中心に活躍したオランダ出身の
大画家、フランス・ハルス(1582~1666)の油絵である。
彼の特徴はそのほとんどが肖像画であり、よくあるだんまりした堅苦しい額縁の作品ではなく、
表情の一瞬をとらえた今でいう写真のような素早い描写力、またそれによって喜怒哀楽や
当時の時代背景も感じ取れるくらい人間味溢れる作品が多い。
私は以前、イタリアにいた頃”Uffizi”美術館でレンブラントを含め、彼の
作品も見てきたので、懐かしく感じるところがある。
有名なものには「陽気な酒飲み」や「頭骸骨をもつ男の肖像」など、その独特な
感性と描写、風俗画も含め人物の息遣いや身振りまで、生々しいその画風は
見ている者を引き込む力がある。
さて、話しを戻してこの笑う少年、どこか粗さを感じると思うが、これは
日経にも書いてあったように、速描きといって一気に力強く、最小の筆遣いで
描き上げる当時としては珍しい技法の一つである。
一瞬をとらえるため、その印象を逃すことなく勢いに任せて一気に描き上げることで
躍動感や笑う楽しさ、陽気さなど、その人物の内面もその筆遣いによって表現される、
決して雑とは違う、当時は画期的な技法であった。
言うまでもなく、写真機という代物が発明される約200年も前に、このような人の存在感をも
描き上げたその作品たちは大変貴重で傑作である。