今朝、2019年度叙勲の内容が発表されたニュースを見た。
その中で紫綬褒章の発表もあり、決定者のコメントや記者会見などが報道され、
一同に謙虚と自信に満ち溢れたお顔をされていた印象を受けた。
そして今朝、ぎをん齋藤では約30年もの間、刺繍の職人として
携わっていただいた御歳83歳の素晴らしい”職人さん”が引退される
ということで、暫らくぶりにご挨拶にいってきた。
その方はいわゆる昔ながらの職人気質で、強面、自分の腕一本で
今まで家族も養ってこられ、この世界ではベテラン中のベテラン、
一種のオーラ、近寄りがたい空気も漂っているような方ではあるが、
一度打ち解けると話好き、かわいい笑顔でほほ笑んでくれるのである。
その方から先日(14日前)に引退をすると通達があった。
私の心情は”長い間お疲れ様でした!”と感謝の気持ちと同時に、
一人の貴重な人材(伝統)がこの世界から消えていくというなんとも
言えない、残酷な時間の流れというものも感じた。
今朝の叙勲の話だが、名前こそ世間にはでない無名な一職人ではあるが、長い人生
コツコツと台(刺繍をする机のようなもの)と向き合い、地味で誰にもその技量を
自慢することなくいつも自分と台に向き合い、他には真似のできないすばらしい
刺繍をされてこられたこの職人も十二分、紫綬褒章に値すると心から思う。
その方からするとそんなものいりません!とおっしゃるに違いないが、
その功績はやはり称えるにふさわしい、崇高なものである!と言いたい。
今朝、お会いしにいくと1人静かに新聞を読んでおられ、この歳まで仕事ができたことが
何よりの喜びであり、感謝しています。といつもの笑顔でおっしゃっていた。
ご本人はいたって元気でいるが、何処か寂しさが漂い一つの灯火が誰からも
称えられることなく、静かに消えていくのを身をもって感じた貴重な時間であった。