長絹
朝夕には日差しも弱まり、日に日に風も秋めいた涼を運んでくれるようになりました。
このまま穏やかに秋になってくれたらと思っております。
今年は久方ぶりに長絹の機をこしらえました。
一般的な「長絹」は
固く織って張りのある,またはのりで固く張った上質の絹のこと。
それを生地として仕立てた水干(すいかん),狩衣(かりぎぬ)または直垂(ひたたれ)のこと。
鎌倉時代から武家の衣服として用いられました。
能楽では絹の単衣(絽または紗)で広袖のもの。
主に舞を舞う女性の上衣や位の高い武将や貴族の衣装として用いられています。
アトリエでいう長絹は絽の帯地のことです。

↑写真右よりの石輪の付いているもの(振綜絖)
「うすもの」と呼称される絽・紗・羅の機には振綜絖(ふるえそうこう)という仕組みがあります。
織物では通常経糸と緯糸は垂直に交わりますが、
振綜絖では経糸が隣の経糸に捩りを生じさせることで生地に隙が空きます。
アトリエの機では、三越の平織ごとに捩りの口があるため等間隔に絽目が織りあがります。
↑絽の目
独特の透け感は夏物らしい涼やかな印象を際立たせます。
いまは白い経糸で試織を進めています。
濃い地色も明るい地色も似合い、色々な魅力が生まれそうな予感がしております。
柄の部分には箔を引いていますが、金糸や絹糸でも印象が変わって面白いかもしれません。
来年の夏にはより一層お楽しみいただけるようご提案していきたいと思っています。
宮地