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筆 : 齋藤 康二

今回は9月の着物と帯でご紹介した

”夏紬金茶地松竹に波頭染帯”の続きです。

ご覧のように立派な松の古木が優雅に伸び、その足元には

あらい波頭と笹が悠然と鎮座している構図となっています。

 

この染帯の特徴はまず生地にあり、夏物として織られたこの生地は

織目も夏物らしくあらいのですが、絽目は均一に表現されていて、

比較的目の詰まった風合いとなっています。

生地感には少し野趣味があり、染め上がりは抜群に良い!

といっても過言ではありません。

ご覧のようにこの”金茶色”はとても複雑で難しい色調なのですが、

このようになんとも奥深く品のある色合いに染め上がるのも

この生地の大きな特徴なのです。

そして柄行きは動きのある松竹に波頭、すべて友禅で仕上げていますが、

松竹は波頭に合わせて動きのある構成にしました。

友禅は古色を中心に、【ぼかし】を取り入れ全体に柔らかく仕上げています。

それとは対照的に波頭の友禅は”胡粉”のみ、色は使わずぼかしで

仕上げ、胡粉特有の固さをあえて表現しました。

 

【まきのり】とは、生地を染め上げる前に大小つぶの糊を生地の上に刷毛で

集散をつけてまき散らす技法の名称です。

そのつぶ糊が乗った生地を染めることで、糊の部分が後に生地”白”となり、

集散、抑揚をつけた形に白く残る”まきのり”柄として成立するのです。

何気ない柄ですが、そのつぶ糊のまきかた、大小、集散の付け方など、単純なゆえ

高い技術と豊富な経験がないと”絵”にならない、崇高な文様の一つです。

筆 : 齋藤 康二